アンビヴァレンス

 朝日の橙と夕日の橙は全く違う。
 東から昇り始める光はすべてを照らし出す。それは贖罪を促す刃のように見えた。西に沈みつつある光はすべてを包み込み、裁く者の目を塞ぐ濃霧に見えた。
 「めい、起きて。実験は終わったよ」
 最後の夏、私はたしかそんな言葉を口にした。名ばかり立派なかがく部で、唯一まともに活動していた私とめいは学生生活最後の実験を試みていた。
 向日葵と紫陽花は交配できるのか。
 答えはノーだ。それは私とめいもはなから知っている話だ。

アンビヴァレンス

アンビヴァレンス

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-15

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