桜の恋歌/短歌集(新作)


― 逢いよりて桜の陰の月明かり
   草の(しとね)の甘美なること ―


こうなると知っていたわと乱れ髪
手で梳きながら衣まといぬ

花冷えを熱き胸に抱かれて
見上げる八重の幸せの花

知らぬ顔して待つ春の夕間暮れ
   二人の逢瀬を知るは月のみ

漂うは君が匂いか花の香の
   切なき胸に想い(みなぎ)り 

面影をい抱きて駆け行く先はそれ
 村の境のあの桜影

待つ人は今にあの道駆け上り
   熱きこの身をしかと抱きなん

春の夜の霞みに紛れて恋うる身を
   月よ照らすな桜木の影
   
(いだ)き合う熱き鼓動の嬉しさに
   流す涙よこれが恋かや

この想い言わんとすれば白き指 
   唇にあて我引き寄せぬ

見つめ合えば濡れた瞳の奥の奥
   怪しくひかりて我を惑わす

渇きをば癒してともに 微睡(まどろ)みぬ
    絡めし指はそのままにして

誰一人言うてはならぬと()を纏い
   離れる身をば引いて(いだ)きぬ

明けぬ間にと下りゆく(ひと)の後ろ髪
   その移り香を我に残して

あくる夜も待つと告げれば振り向きて
   そっと頷き微笑み返しぬ



― 時移り桜の花は散りゆけど
    我恋う 心よ永遠(とわ)に変わるな ―

 
*桜の歌のお好きな方は『さくらによせて』の
  コーナーをご覧ください。140首以上掲載
  しています。(いずみ)
     

桜の恋歌/短歌集(新作)

桜の恋歌/短歌集(新作)

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-14

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