紙の公園
紙の本はいい。
紙をめくる指先の感覚、紙の匂い、本の全てが好きだ。
僕は、公園のベンチの木陰で本を読むのが最近の自分の流行りである。
4月、その公園は桜が満開になるが桜より僕は本を読む。
僕は、何故ここで本を読むようになったのだろう……
僕は、颯馬遙人。今年で高校3年になる。
水泳部に所属しているが、進学クラスで昨年から、ろくに部活に顔を出していない。
でも、いくら進学クラスと言っても春休みに顔を出さなかったのはまずかっただろうか、と遙人は新学期始まって思ったが流石に覚えてないだろうと思ってその考えをひと蹴りした。
入学式も終わり帰ろうと思ったが、今日は歩きで来たのを忘れていた。
なんで朝の気まぐれで歩きで来てしまったのか、全然覚えない。
「仕方ない、歩いて帰るしかないか。」
いつもは自転車で何気なく2年間通っていた道だが、今日は何だかいつもの道がまるで違う世界に迷い込んだようだった。
いつも見ているようで、まるで見えてなかった、そこにもあそこにも細道があり、ただの一本道ではなかったんだなと、遙人は思った。
道を歩いてる途中、ふと1本の小道に目が止まった。そこの小道の奥には、綺麗な薄紫色の藤棚があった。
遙人は知らず知らず吸い寄せられていた。
「通学路にこんなとこあるなんて知らなかったな」1人なのに思わず言ってしまった。
藤棚を見ながら、進んで行くとそこには、公園があった。子供は誰1人いず遊具の類はまるでない寂しい公園に見えた。
ただ遙人には充分満足できるものが、そこにはあった。
大きな木々の下にベンチが3つほどあったのだ。遙人は、真っ直ぐにベンチに向かった。
そこは、桜の木陰に丁度掛かっていて風が吹けばとても気持ちいい春風だった。
ここなら、人も少なく気持ちよく、本を読むのにちょうどいい場所だった。
公園の名前を探したが、見当たらなかった。
遙人は、この公園のベンチに惹かれていた。
気づいたら1時間もたっていた。
遙人は、その公園を後にした。
次の朝、遙人は今日も歩いて学校に行く事にした。いつもより早く行くのは、少し面倒だったが公園の事を思ったら少しも苦じゃなかった。
そして、学校も終わり例のごとく、部活をサボりゆっくりと公園に向かった、細道に入り藤棚を抜けあの公園のベンチが見えた。
でも昨日と少し違っていた。
今日、そこには少女が座って本を読んでいた。
その少女は、髪は長く黒髪が綺麗で彼女もまた本を読んでいた。
遙人は、心の中でクスリと笑った。
自分と同じ考えの人がいると思うと、凄く嬉しい気持ちになった。
遙人は、真ん中のベンチに腰かけ、ゆっくりと本を開いた。その瞬間、隣から声がした。
「SF小説が好きなんですか?」
そう少女が訪ねてきた。
内心凄くびっくりしたが、表面には現れて無いはずだ……
「いや、たまたま読んでいるだけです。」
何故この少女は、声を掛けてきたのだろう。
「すみません、突然声掛けて。」
「いえ、あなたはSF小説が好きなんですか?」
「いえ、ただその小説読んだことがあったので。」
今読んでいた本は[アンドロイドは電気羊の夢を見るか]と言う本で、少女が読む本だとは思わなかったから少しびっくりした。
その後はお互い話すこと無く日が暮れる前に遙人は、家に帰る事にした。
その少女の着ていた制服は見たことがなかったが、調べたら、意外と近くの女子校らしい。ずっと住んでいるのに、そんな事も知らないなんて今までなにを見てたんだろ、と考えたら少し可笑しくなった。
次の日も歩いて学校に行くことにした。あの公園に、自転車で行くのもいいと思ったが、藤棚を直ぐ過ぎるのは、勿体無いと思ったからだ。
学校は無事に何事も無く終わり、今日もそのまま公園に行こうとした。その時、声をかけられた。振り返ると知らない人がいた。
(誰だこいつ??)あっそういえば、部活の顧問だった、すっかり忘れていた。
他の生徒だったら、顧問の顔は忘れないだろう普通。
どうやら僕は普通の人じゃないらしいとっても残念だ。
そんなことより、目の前の人を対処せねば……
「何でしょう先生?」
少し戸惑いながら言った。
「今日も部活来ないのか?」
正直ギクッとした、なぜならこの先生は「今日も」っと言っているのだ。
流石にバレていたらしい。
「まぁ今日もちょっと用事が…」
少し無理が合っただろうか…
「なら仕方ないが」
誤魔化せた!
「でもお前、部活で何かあったのか?」
「いえ、まったく顔出してないのに何かなんてあるわけないじゃないですか。僕はここらで失礼します。」
僕は公園に足早と向かった。
今日の藤棚は少し曇っているような気がした。今日も少女はベンチに座って本を読んでいた。遙人は、挨拶をし、いつものベンチに座ろうとした。
「どうしたんですか?」
突然問われた。
「何がですか?」
何を聞かれたかさっぱり分からない。
「顔色が悪いようですが、大丈夫ですか?」
どうやら体調のことを気にしてくれたらしい。
「大丈夫ですよ、少し走っただけですから。」
どうやら納得してくれたようだ。
ほっと一息ついて本を読み始めた。
本を読み初めて少したった頃ふと声に出してしまった。
「そういえば、この公園の名前は何なんだ?」
少女は、少しびっくりしていた。
「この公園は、言の葉公園って言うんですよ。」と答えてくれた。
「よく知ってますね、どこで知ったんですか?」
「ベンチの裏に書いてありますよ。たぶん、愛称ですが。私はそう呼んでます。」
本当に書いてあった。よく見つけたもんだ。
「この公園にピッタリな名前ですね。」
少し話をした後、本に戻った。しばらくして家に帰る時に、見た藤棚は、いつもの綺麗な藤棚に戻っていた。
遙人は、それから何度、もあの公園に行き少女と少し話しながら本を読み、暗くなれば、帰るというのが習慣になっていた。
だが、少女の名前を知らない。毎日会う人の名前を知りたいのが普通だが、なんだか遙人は知らなくてもいいような気がした。
やはり、僕は普通じゃなかったようだ。
お互いを知らないってのがあるのかも知れない。会話はするが名前を聞く事は無かった。
なんだか遠いが近い様な距離
この距離を、遙人は気に入ってた。
ある日、たまたま先生にあっただけで、部活の集まりに呼ばれてしまった。
正直行きたくないな〜と思ったけど、呼ばれてしまったからには行くしか選択肢はなさそうだ。
久しぶりに、部室に入った。見た事のない人が沢山いた。
部室を間違えたかも知れない、だが確かに塩素の匂いは、する。
そうだ、一年生が新しく入ったのを、忘れていた。もう一年生は馴染み始めた頃だった。
でもさっきから、視線が刺さるように痛い。何故か一年生らしき人達が、こちらを向いてコソコソ話していた。
それもそうだ。一年生からすれば遙人は、知らない上級生なのだ。
そして2.3年生もまだ居たのかと、言う目を向けてきた。
だから部活には来たくなかったんだと遙人は思った。
長い時間を耐え、この空間にいるだけでおかしくなりそうだった。
長いと思われた時間だったが、たった15分だった。
知らない間にここまでの拒否反応が出ていたとは……
早く帰ろう、これ以上具合悪くなる前に。
だめだ、体調が優れない。
公園による予定は無かったが、家まで持つ気がしない、なんとか公園にたどり着いた。
視界が少し霞んでいる。
またか…この感じ前にも・・・
遙人は、ベンチまであと少しのところで倒れてしまった・・・
起きた時、空は真っ暗だった、まだ目が見えてないのかと思ったが、そうではないようだ、ちゃんと上には、木がみえていた。
あれ? ベンチにたどり着いて無かったはずだが、なぜだ・・・
やはり背中が平らで、なんだか頭が凄く楽だ。起き上がろうとしたその時、
「あっ気がついたんですね、そこに倒れていたんで心配しました。」
話を詳しく聞くと、わざわざこのベンチまでなんとか引き上げてくれたらしい・・・ついでに膝枕まで・・・
こんな、数日喋っただけなのに・・・
まだ名前も知らないのに・・・
凄く心が熱くなった。
少女には、何度もお礼を言った。
だが、彼女は理由は、けして聞いて来なかった。
でもその代わりに彼女はこう呟いた
「言いたい時が来たら、いつでも言って下さいね…」
あの現象は、いつから思い出せばいいんだろう。
そうあの時は、桜がまだ散る前だ
うちの学校は、2年から進学クラスか普通クラスかを選ぶ時期がある。遙人は、学年で10位くらいの優秀な方だった。必然的に進学クラスに送られた。
そうなると、2年は基礎的な内容を叩き込むために部活の時間を使って補習をやるので部活は当然行けなくなる。
それでも、その時はただ泳ぐ時間が減るだけでなにも変わらないと思っていた・・・
そして、補習がはじまった。うちの学校は、特殊でみっちり補習があるのは2年の時だけで3年は、各自でやれとのことだった。だから2年は耐え3年は部活を必死に取り組む予定を2年の時から、考えていた。
それは、補習が始まってちょうど1ヶ月ぐらいたった時だった。たまたま補習もなく、久しぶりに部活によった。休みが急だったこともあり水着を持っていなかったが、見学するだけでも行こうと思った。
遙人は、気分よくプールへ向かった。
部活についた遙人は先生に挨拶をしてから更衣室に入った。そこには、沢山の一年生がいた。そうか遙人は、この景色を見て自分は先輩になったと初めて実感が湧いた。
感動してる遙人とは裏腹に多分この頃だと思う。同級生や先輩が誰1人として、話しかけて来ないのだ。
まだ気づいてないだけかなと思ったが、明らかにこちらを向いていても遠くから見られているだけだった。
その頃の遙人は、まだ気づかないまま話しかけたが、みんなの反応が薄い。そこでようやく遙人は気づいたのだ。
自分が避けられている事に・・・
何故だ自分は何をしたのか、何もしてないはずだ…
答えは、簡単で単純だった何もしていなかったからだった。
遙人が思うに、部活の人と仲良くなる理由は「痛みの共有」である。
部活をやっていれば、辛いタイミングが誰にでも来る。そうゆう時に、仲間入ればとか仲間もやってるから、という理由で仲間意識が沸くからである。
それを遙人は、怠り過ぎたのだ。
仕方ないとも思ったが、遙人は絶望した、人の絆はこんな容易いものだったのかと…
遙人は、目の前が見えなくなってその場に倒れ込んでしまった・・・
遙人は、ベットで目を覚ました。起きているはずなのに視界が半分くらい真っ暗だった。
そこには、保険の先生がいた。
遙人は、視界が一部暗いのが不安になった。
遙人は、勇気を出して聞いてみた。
聞いてみるとストレスによるものらしい時間がたてば直るらしいが遙人は、凄く不安になった。
保健の先生は、顧問などに伝えようとしていたが遙人はその時こう言った。
「他の先生と生徒には言わないで欲しい」と駄目もとで頼んでみた。
正直、こんな理由で倒れたのも知られたくないと思ったからだ。
頼み込んだ結果、今回ばっかりは黙っててくれるらしいが次このようなことがあれば遠慮なく言わせて貰うとまで言われてしまった。
遙人には、それだけでも正直ありがたかった。
その後、病院に連れて行かれ入院することが決まった。
その日は、金曜日だったこともあり土曜日、日曜日の2日間は、入院となった。
そして、ベットに居ることを余儀なくされた。
遥人にとっては、別になんの苦でもなかったが、医者のカウンセリングだけがとても嫌でしかなかった。
カウンセリングが嫌だったのは、医者が、まるで傷を抉るかのようにいろいろ聞いて来たが、そのたびに発作の様なものがでた。
そして、もっとひどい時は、目の方まで悪くなり、しばらく見えないこともしばしばあったが、そんな時でも遥人は、本のページをそれでもめくり続けた。
遥人は、紙をめくる音や紙の匂いを感じるだけで、心が落ち着くような気がした。
遥人は、心底、本が好きで、自分の生活に欠かせないものだったのを知った。
この病院に、来て唯一良かった出来事だった。
その様な理由から、部活をさぼる様になったが、その分、勉強に専念した結果が今の成績に繋がっている。
その頃は、本を読むか勉強する以外の選択肢は、なかったが、今は、違う。
やってる事は、一緒であっても、あの頃とは、全く違う感覚だった。
ただ少女と公園で、本を読んでいるだけで一人じゃないという感覚と本の内容も普段以上に頭に入るとてもいい感覚だった。
その時、ふとある事が、頭によぎった。
自分は、少女の事が気になっているのではないのか、という事だったが、その考えが馬鹿らしくなってやめた。
でも、心の中は、少しもやもやしていた。
それから、遥人は、毎日のように、学校が終わると歩いて公園に行き、少女と挨拶をかわし本を読むという習慣が続いた。
気温は、徐々に暑くなり、桜の葉は、すっかり散り、青々とした葉っぱになっていた。
夏は、もう直ぐそこまで近づいていた。
夏と成るとやはり部活が終わり頃も近づき三年生は、必死になってる頃だった。
プールからは、部員の声や水の音が鳴り響いていた。
遥人は、部活の内部事情は、一切伝わって来ないが、努力をしているのは、痛いほど伝わって来ていた。
遥人は、その水の音を聞いているだけで、心が少し辛くなった。
自分は、最近何を頑張っているのか、考えてみたが、何一つ思いつかなかった。
だがその前に頑張るものがないのだ。
あいつらは、あんなに頑張っているのに……
遥人は、珍しく公園に寄らずに帰っていった。
遥人は、家に帰り自分もなにを頑張ろうか、考えてみたが、これといってやりたい事が、見当たらなかった。
そして本を読み始めてすぐに思った。
「小説を、書くなんてのは、どうだろうか…」
なんとなく、思いついた事だが、少し始めて見ようと思った。
遥人は、そう思うと、紙と鉛筆を手に取り考えた。
自分が思ったより出だしは、好調だったが、すぐに手が止まってしまった。
その小説は、続けるのは、難しいと思いその紙を破って捨てたが、考え方が良かったので、テーマはそのままで書くことにした。
そして、一つ書き終わり、時計を見ると2時間もたっていた。
一つ書き終わったと言っても結局、詩になってしまったが、遥人は、とても満足していた。
タイトル (スプートニク1号)
スプートニク1号とは、1950年に旧ソ連によって、打ち上げられた、人類初の人工衛星のことである。
この詩は、自分が、初めて書いたものだったのと、星がテーマだったのでタイトルをつけて見たが、自分でも何度も読み返す出来だった。
でも1つだけ残念な点があった。
それは、小説にならなかった事だけが、少し残念だった。
そう思い、遼人は、思いきってテーマを心機一転しようと思った。
テーマと言っても、そんな簡単に思いつくはずもなく、しばらくの間、手が止まってしまった。
でも、まず小説を書くとしても、それなりの知識が無いと書くのは、難しいと思った。
自分の趣味や体験した事を中心に考えていこうと思った。
考えるうちに、ふと思いついた。
自分の生きた道をそのまま語れば、いいのでは、ないかと。
方向性は、定まり今年1年の事柄から、書き始めようと思った。
次は、主人公の名前だが……
主人公の名前は、「颯馬遙人」と自分の名前を使う事にしたが、普通の人なら決して自分の名前を使わないと思ったが、やはり自分の物語、自分の人生の事だから、自分にしか過ごす事が、出来ないと思ったから、恥ずかしいとは、なんとも思わなかった。
とりあえず、方向性は、春からの事を思い出しつつ、素直に心の赴くままに書き始めた。
そして、公園を見つける場面が、来た。
やはり、その場面は、公園に行って書いた方がいいと思い学校の後に行くことにした。
そして、学校が終わり、公園に向かった。
そして、いつものベンチに座り本では無く、紙と鉛筆を取り出し、初めてベンチに座ったことを、思い出しながら書き始めた。
そして、隣のベンチの少女は、不思議そうにこっちを見ていたのには、気づいたが気づかない振りをしておこう。
公園に初めて来た時の事を書き終えた所で、空が、暗くなりかけてるのに気づいた。
もうこれ以上書くのは、無理だと思い、片付け始めた所で、声をかけられた。
「先程は、何を必死に書いたてたんですか?」
まぁ、そりゃあ気になるだろうなと思い遼人は、素直に答えた。
「昨日から小説を書き始めたんだ、外の方が捗る気がしてな。」
「小説ですか凄いですね!出来たら見せて貰えませんか?」
「凄くはないが、完成するか、分からんからなんとも言えんな。」
「では、出来たら是非読ませて下さいね。」
まだ、書き始めたばかりなのに読ませる約束をしてしまった。
まぁ読ませるか、どうかは、別にしてどんどん書かなきゃなと思い公園を離れた。
そして、毎日のように公園に通う生活になった。
ベンチに座り、遥人は、書き始めた。
何故だかここ数カ月の事は、鮮明に覚えていたので書くのに困ることは、なかった。
そして少女と出会う場面だが、ばれないように左を見ながら特徴を掴みながら書いていった。
そして思い出しながら、次々に起きたことを紙に書き留めていった。
こんなに自分の事を思い返した事は、今までなかった。
遥人は、自分の事を振り返ったり、過去の事には、興味が全くなかった。
いい風に言えば、前向き、悪い風に言えば前しか見ない馬鹿…
なるほどね…遥人は、自分の弱点を垣間見た気がした。
はぁ…
そして月日は、流れ青々しい葉っぱも枯れすっかり黄色や赤色に徐々に染まっていった。
{紙の公園}の方もほとんど書き終わっていたが、ここで、大きな問題が二つ
まず一つ目の問題は、終わり方が綺麗に終われないのだ。
理由は、簡単で何も考えずに始めたからである。
次に二つ目の問題は、一つ目の問題が、解決しないことには、関係ないのだが少女に見せるかと言うことだが一応今のところは見せる予定である…
今のところはね…
そうか少女に見せる事を考えながら考えると遥人は、いい案が思いついた。
この終わり方は、小説の終わり方といい区切り方だと思い勢いよく紙に書き始めた。
そして書き終わり一呼吸し遙人は、近くのコンビニに向かい遥人は、自分の小説をコピー機でコピーを始めた。
コンビニから紙の束を抱えて遙人は、コンビニを後にして家に帰ることにした。
遙人は、その日の夜に紙をきれいにまとめ本を作り始めた。本といってもそんな立派な物ではなく、ただの原稿用紙で特に絵などがある訳でもないがただ綺麗にまとめてたかったのと初めに出来た作品って事もあってきちんとまとめたかっただけだった。
こうして作っていてふとアイデアが浮かんだ実、遙人は「紙の公園」だけではなく詩も
「紙の公園」が思いつかない時に少し書いていたのだ。その詩などを本の中に入れて一つの作品集にすることにした。
でも作品集のタイトルが、必要になる。遙人は、まとめる手を止め、考え始めた。
まずは。『彼女』に見せる事からタイトルに入れようと思ったのは、割と速くに思いついていた。しばらく考えた。
タイトルが決まったころには、もう日が昇り始めていた。
『彼女とあなたときみ』
このタイトルには、知っている彼女、他人行儀なあなた、愛し気なきみ、どれにも当てはまらないようで、すべてに当てはまるような不思議な存在をイメージして決めたタイトルだった。
今まで書いた「紙の公園」と詩を合わせると十六個もの作品にもなった。一つ一つにこめられた感情や願いやその時思った事が、書かれていた。過去の自分が手に取るようにわかった。読む人によっては、恋をしているかのように思わせる詩もなかにもあって可笑しくなった。
色々な感情を抱きながらも作品集が完成した。一つは、もちろん自分もう一つは彼女の分だった。
そして遂に彼女に渡す日が来た。遥人は、いつもより学校を早く出た、そしてあの公園と出会った時と同じように歩いて向かい、藤棚を通り抜け公園に着いた。
いつもより早く出たこともあり彼女は、まだ来ていなかった。
そして遥人は、いつもとは、違うベンチに向かい作品集をいつも彼女が座るベンチに置いた、その後彼女が来る前に遥人は立ち去った。遥人は、自分の書いた様に行動していた。
彼女のいつも座るベンチに置き立ち去った
遥人は、次会う時、彼女との関係がどう変わるかがとても楽しみにしながら立ち去っていった。
「あなたは、なんて声を掛けてくれますか?」
これからは、二人の話…
紙の公園