春降る雪のいやしけ吉事
印象的な夢を見ました。
ある古本屋が私に語った。
父が帰って来ている。相変わらず財布はすっからかんらしい。
昼間は引っ越すあてもない引越し先候補をあちらこちら見て回り、新品のレンタカーのカーナビの威力とアイドリングストップを見せつけられ、着いた先のマンションのショボさなどを見てはゲラゲラ笑う道行だった。
三天で丼を食べ、兄の分は持ち帰りにして帰宅し、甘いものを食べた後、暫し寝転んだ。
夢を見た。
どうも弟のワンセグから聞こえてきたのだけど、内容は、私は中学一年で、一番後ろの席。班内で手紙を回して遊んでいる。
ああこの子達には随分酷い目に遭わされたなと思いながら、私もそれに興じる。
その内古典の時間になり、私を虐めた担任が竹取物語を題材にしたオリジナルのドラマCDのようなものを流し始める。
内容はこうだ。
第一声に、初春の、今日降る雪のいやしけ吉事、と清い声が歌う。主人公の私はどこかの店員で、レジ袋を次々開いているのだが、その手つきが巧妙で仲間に褒められる。
その内連れに、とある古本屋を紹介される。
男は妙な声で、いやはや、こんな仕事をしていると、本だけじゃなくて色んなものが集まってくるんですよ、とキヒヒと笑い、語り始める。
最近手に入れたのは、この本、竹取物語です。
この本は海に浸るような深い深淵の底から引き揚げた本で、開くと必ず雨が降る。
読んでいるとひたひたと頭から海に浸かっているような気分になるーとのこと。
初春の、今日降る雪のいやしけ吉事ーー。
と、また声がして、私は目を覚ました。
あの吉兆の声はなんなのだろう。弟に確認したが、ワンセグではそんな内容の番組はやっていないとのこと。
これがイマジネーションという奴か!とカッと目を見開いた所で、この話はおしまいである。
春降る雪のいやしけ吉事
ほとんど実話です。