『霧』


 雨が降ると川に泥が流れる
 川辺の街には灰色に濁った
 重たく、冷たい霧が掛かる

 荒く波立つ茶色い水面
 立ち込めるのは湿った
 殺気と、停滞する大気

 野鳥が一羽、空から舞い降りてきた

 男はそのことに気付いて足を止め
 堤防からその鳥の様子を見守った

 水面すれすれを鳥が飛んでいく
 茶色い翼がふと、風を受止める

 雄々しく広げた翼と
 水面に刺さる、鋭い
 無慈悲な、かぎづめ
 
 魚がその爪に突き刺さっていた


 [見通しの利かぬ、霧の渦中にて]

かつてCessnaという名前で投稿したものです。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-11

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted