感謝の手紙

感謝の手紙

「まあまあ、聞く前から泣かないで下さいよ。今からちゃんと読みますから。」
男は椅子から立ち上がり、懐から手紙を取り出すと朗読を始めた。
"私は中学2年の時に両親を失いました。今思えば、もっとたくさん話しておけばよかったと心の底から後悔しています。その後、私はこの施設でお世話になる事になりました。ここで私はたくさんの事を学びました。命の大切さや社会の規範を守ることの重要さ、皆さんにはどれだけ感謝しても感謝しきれません。あれから7年、皆さんから学んだことを胸に私はここを出ます。私には夢が、やりたいことが、たくさんあります。私はその夢を必ず叶えてみせます。どん底からのスタートでも、夢を願い続ければ叶うということを皆さんに、世界中の人たちに見せつけてやります。7年間本当にありがとうございました"
この手紙を見た職員たちは皆、涙を流していた。そして今、男の目の前にいるこの女性も涙を流している。男は手紙を読み終えるとそれを折りたたみながら女性の方に近づいた。
「もう、そんなに泣かないで、安心して下さい、あなたで3人目ですから。きっと痛くないですよ。」
男の手にはキラリと輝く鋭利な物が握られている。


今日未明、田原市内の民家から2人の遺体が発見されました。2人はこの家に住む夫婦とみられ、警察は2人の息子を殺人の容疑で逮捕しました。息子は容疑を認めており「人生がいやになった。全てを消したくなった。」などと供述しています。それでは次のニュースです。

感謝の手紙

感謝の手紙

短いです

  • 小説
  • 掌編
  • サスペンス
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-10

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