アボカドとドーナツ

物語的な感じが昨日のやつよりは多少あると思います。

思いついたことを実行するのは、その瞬間がやっぱりいいと思う。

 ある日、私はアボカドを食べていて、ふとある事を思いついたので、それからすぐに出かける準備を行い二駅ほど離れた場所にあるミスドに向かった。
 そしてミスドでベーシックなポンデリングを購入して、そして急いで家に帰った。
 家に買えると、キッチンに行ってそこから大きな丸い平皿を取り出して、それをまずテーブルの上に乗せて、次にポンデリングをその皿の右側に乗せた。そして皿の左側には皮をむいていないスタンダードなアボカドを配置した。
 そこまでやり終えて、床に、家のフローリングに直に座った私の口から、無意識に、本当に無意識に、
 「うん」
 という、声が漏れた。

 それから私は、しばらくその平皿と距離をとった。三メートルくらい。テレビと視聴者の理想的な距離くらい離れた。
 「・・・」
 そしてこれからいよいよ自分の頭の中に思い浮かんでいる事を行うつもりだった。ポケットに入れていた携帯電話を取り出して、その電池を確かめる。電池残量は十分に残っていた。

 これから自分が何をやろうとしているのかを改めて考えて、私の喉はごくりって鳴った。

 それからは無心だった。私は中腰でその平皿の乗っているテーブルに再度接近して、まず皿に乗っているポンデリングを両手で掴んだ。そしてそのポンデリングを新品の輪ゴムを手で引っ張って伸ばす主婦のような動作で伸ばしてから、アボカドを皿の中央に移動させ、その上から引っ張って真ん中の穴の部分が若干広がったポンデリングをかぶせた。所謂、手首についたシュシュみたいなイメージ。
 「・・・」
 それが終わると、私はまた中腰の姿勢でその場を離れた。なるべくすばやく離れた。音を立てないように静かに。
 「・・・」
 離れた場所から再度確認をする。テーブルに載った丸い平皿の上には・・・、

 ポンデリングをその身に纏った、もっといえばポンデリングを着たアボカドが乗っていた。

 「・・・」
 私は自分の指についたポンデリングの糖分を舐めつつ、しばらくポンデリングを着ているアボカドを眺めた。

 「いい」
 口から声が漏れた。そのような声が、満足げな声が漏れた。

 「いいわあ」
 感嘆の声。実際、脳内で想像していたポンデリングを着たアボカドよりも、こうしてみる実物のほうが、なんかいい気がする。断然いい気がする。

 「おおおお!」
 私のテンションが、ションテンが上がった。時差的な感じで、上がった。跳ね上がった。うおぃ!ポンデリングを着たアボカドっていいなあああ。
 超いい!
 オシャンティじゃん!
 クールジャパンじゃん!

 それから私は手を洗い、キッチンタオルでしっかりと拭いてから、ポケットからスマホを取り出して、そのポンデリングを着たアボカドを、通称アボカドドーナツの写真を撮った。
 何枚も撮った。角度を変えたり、光度を変えたり、加工用にと何枚も撮った。撮りまくった。連射もした。フラッシュも使ったりした。動画も撮った。
 「きゃわいい~」
 って言ったり、
 「お~よちよち~」
 って言ったり、
 「どしたの?どーちたの!」
 とか言いながら撮った。

 子供の頃バービー人形とか、着せ替え人形の何が面白いんだと思って一切遊んだことが無かった私だったけれど、でも、アボカドにポンデリングを着せたとき、何が面白いのか少し分かった気がした。

 撮りまくった写真は、インスタグラムにアップしようと思ったが、でも私はそもそもインスタグラムの会員登録をしていないので、それはすぐにあきらめた。
 動画は、ニコニコ動画にアップしようと思ったけど、でもそれも熟考してやっぱりやめることにした。
 ツイッターにそう言う事をしたって言う事くらいはつぶやこうと思ったけど、でも結局それもやめた。

 まだ独り占めしたい。

 って思ったのだ。まだ誰にも教えたくない、ってそんな風に。

 それからすぐ、誰にも見られないうちにアボカドとポンデリングを分離させて、ポンデリングはそのまま、アボカドは皮を剥いて、食べた。むしゃむしゃと食べた。
 「・・・うまし」
 どちらも美味しかった。

 今度は、ポンデスノーショコラ辺りを着せようかと考えている。

 期間限定なので急がなくては・・・。

アボカドとドーナツ

のびのびポンデリングっていうのが最近出ているらしいんですけど、それのことをかけなかったのが悔やまれます。

アボカドとドーナツ

アボカドとドーナツが好きでよく食べる人の話・・・かなあ・・・

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-09

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