コンマ


時間が止まったように人は動かない
声をかけても叩いても誰も動かない

誰でもいいから出てきて

叫ぶと後ろから声をかけられた。
振り向けば、小さい頃大嫌いだった近所のお兄ちゃんが不機嫌そうな顔して立っている。
手で後ろ頭を掻いているのを見て、涙がとまらなくなった。

「何泣いてんの鬱陶しいな」

近付いてくると手をとられる。
そのまま引っ張られるように歩いていると途中行き先が気になった。

「行きたいとこに行く」

道路の真ん中を二人は手を繋いで歩く。車も何もかも止まっているから蹴ったりしても運転手は怒らない。
止まった人を指差して美人とか背が高いだとか性格悪そうだとか言ってもマネキンのように動かない。だから怒られない。自分達に無関心の世界。
そんな世界が怖くて、立ち止まるとお兄ちゃんは眉間に皺を寄せた。

「みんなを元に戻して」
「なんで?」
「さびしい」
「俺もいるじゃん」
「いやだ、こわい」

んー、考え込むような仕草をされ手を離された。急いで服の袖掴むとお兄ちゃんは無表情になる。
それから少しだけ優しい声を出す。

「大人になるってのはこういうことだ」

どういうことか、よくわからなかったがお兄ちゃんが笑うと世界はいつも通り動き始めた。

コンマ

コンマ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-09

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