『 ため息の穴 』

ある日、僕の家の庭に真っ黒で小さい穴がぽっかりと開いた。
テストが悪い点数だった僕は、ついつい穴を見ながら深いため息。

「はぁ」

するとどうだろう。
そのため息が、黒い穴に吸い込まれていくじゃないか。
なんだか気分もスッキリした。
あれは、そういう穴だったんだ。



それからというもの、何か嫌な事があったら穴にため息をつく事にした。
あそこにため息をついた後は、どんな時でもとてもスッキリできた。



数年経ったある時、僕の家が傾いている事に気付いた。
業者に調べて貰ったところ、庭が酷く陥没してしまっているらしい。

「……まさか」

僕の長年のため息を溜めこんだ庭は、かなり落ち込んでしまったようだ。

『 ため息の穴 』

『 ため息の穴 』

極短小説。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-07

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted