『 怪人パルテノン神殿現る! 』
。
「怪人パルテノン神殿って知ってる?」
学校からの帰り道、健一が言った。
こいつは少し、いや、かなり変わってる。
「下校途中に、厳かなバックミュージックと共にいきなり現れて、ジャンケンをしようって言ってくるんだ。勝ったらお小遣いが貰えるんだけど、もしも負けてしまったら」
「食われる、とか?」
「いや『残念だったな』って、イチゴ味のあめ玉くれるんだよ」
うわ、パルテノンめっちゃ良い奴じゃん。
「……じゃあ、気をつけてね」
走り去ってく健一。
やっぱり変わってるなぁ、あいつ。
健一と別れて人通りの少ない道を歩いていると、何処からか厳かな音楽が聞こえてきた。
まさかと思って振り返ると、今日社会で習ったばかりのパルテノン神殿の姿。
何故か手足が生えているけど。
「……」
今やこの街は、健一が思いつきで作り出した怪人だらけだ。
変な怪人を作った健一がおかしいのか、それが存在できるこの世界がおかしいのか……それともそれが見える僕がおかしいのか。
きっとこれから、毎日怪人が増えていっても僕はその結論にたどり着けないだろう。
そして僕の手には、イチゴ味のあめ玉が一つ。
『 怪人パルテノン神殿現る! 』