『 怪人パルテノン神殿現る! 』

「怪人パルテノン神殿って知ってる?」

学校からの帰り道、健一が言った。
こいつは少し、いや、かなり変わってる。

「下校途中に、厳かなバックミュージックと共にいきなり現れて、ジャンケンをしようって言ってくるんだ。勝ったらお小遣いが貰えるんだけど、もしも負けてしまったら」

「食われる、とか?」

「いや『残念だったな』って、イチゴ味のあめ玉くれるんだよ」

うわ、パルテノンめっちゃ良い奴じゃん。

「……じゃあ、気をつけてね」

走り去ってく健一。
やっぱり変わってるなぁ、あいつ。




健一と別れて人通りの少ない道を歩いていると、何処からか厳かな音楽が聞こえてきた。

まさかと思って振り返ると、今日社会で習ったばかりのパルテノン神殿の姿。
何故か手足が生えているけど。

「……」

今やこの街は、健一が思いつきで作り出した怪人だらけだ。
変な怪人を作った健一がおかしいのか、それが存在できるこの世界がおかしいのか……それともそれが見える僕がおかしいのか。
きっとこれから、毎日怪人が増えていっても僕はその結論にたどり着けないだろう。


そして僕の手には、イチゴ味のあめ玉が一つ。

『 怪人パルテノン神殿現る! 』

『 怪人パルテノン神殿現る! 』

極短小説。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-07

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