卒業式
普段では信じられないほど沢山の情動が起こる。
その空間が何だか怖い。
その光景は、まるで大地震が起こった後のような。はたまた死んだと思われていた人間が無事生還してきたときのような。
人々の心が大きく大きく、揺れ動き、渦を巻く。
その振動は次第に伝染していく。
広がる波。
私はそのなかにいるの?
のまれたら終わり。
私もあなたも、みんなみんな一緒。
一緒に一緒に、ゆらゆら揺れる。
その熱気は個性を殺す。
殺された側は気がつかない。
ゆっくりと首にかかる白い手。
それに気づかず、ゆらゆら笑う。笑う。
そんな、怖さ。
卒業式
一人一人がそれぞれの過去に思いを馳せて、感傷的になる。密室に近いような空間で、大勢の人の感情が揺り動かされる。
卒業式=感動的でプラスなイメージが勝手に常識みたいになっているけれど、この空間ってちょっと怖くないですか。毎回倒れたりする人がいるのも、不思議だなぁと思うんです。もちろん体調のせいがほとんどなんでしょうけど。場の空気感っていうんですかね。あれが、怖いなぁと。
『一体感』は賞賛ばかりされる。しかし、それは同時に個々を押し潰すことじゃあないのかな。