片想いの射線上
声劇台本です
♂2
♀2
計4人
♂崎人:ちょっと……いや、だいぶ性癖の偏った思春期男子。
♂アキラ:いたって普通の思春期男子。普通ったら普通。
♀秋:甘いもの大好き。天然なふわふわした可愛らしい女の子。天然。とりあえず天然。
♀佐代美:真面目な風紀委員長ちゃん。アキラに片想いしてる恋する乙女。
こめでぃ
作中で『トリィのウタ(著作権スレスレ)』という某アニメの歌詞があったりなかったりするので、知らない方は音痴のテイで頑張って下さい
崎人:……俺と、付き合ってくれ
アキラ:無理
崎人:なんで!付き合ってくれよ!
アキラ:鑑見てきたら?
崎人:いやいや鑑見てきたところでイケメンしか写ってないから、な?
アキラ:そうじゃねえよ、なんで俺がお前と付き合わなきゃならねえんだよふざけんな!
崎人:好きなんだからいいじゃん。
アキラ:俺は同性に興味なんてねえんだよ!俺は女が好きなの!わかる!?
崎人:俺もお前が好きだぞ!loveだぞ!
アキラ:……あの、あの……ごめん。ほんっとに近づかないで。
崎人:俺が!お前を!幸せに!する!
アキラ:よ、寄るな!こっちくんな!
崎人:いいじゃなぁいのぉー。
アキラ:逃げるっ!
崎人:あ!まてこら!
アキラ:ヤバイヤバイヤバイヤバイ!掘られる!掘られる!!どこか、どこか逃げられるところはないか!
秋:きゃっ!び、びっくりたー。どうしたの?そんなに慌てて。階段で急ぐと危ないよ?
アキラ:おぉ!秋ちゃん!女神よ!
秋:へ、へ?女神?
アキラ:なぁ!確か秋ちゃんの美術部って男子禁制だったよな!?
秋:う、うん。そうだけど……。
アキラ:匿ってくれ!変態に追われてるんだ!お願いだ!
秋:え?でも男子は入っちゃだめだから……。
アキラ:頼む!ほんとお願い、お願いします!
秋:どうしてそんなに危機迫った様子なのかよくわからないけど……。でも部長に怒られちゃうから……。
アキラ:駅前のパフェ奢るから!
秋:任せて。こっちだよ
アキラ:(さ、流石甘党で有名なだけある。素晴らしいほどの手のひら返し)
秋:ここだよ。準備室なんだけど、基本必要なものは皆持ち帰ったりして手元にあるから、あんまり使われてないんだ。
アキラ:おお、助かる!
秋:でも、たまに女子が来るときもあるから気をつけてね
アキラ:おう!
崎人:アキラァァァァーー……。
アキラ:げっ。まずい近づいてきてる!
秋:ろ、ロッカーに!速く!
アキラ:お、おう!
/
ガサゴソゴンゴンバタン
\
アキラ:え?
秋:え?
アキラ:なんで秋ちゃんまで一緒に入ってるの?
秋:え?なんで?……あ。なんで私まで一緒に入ってるの?
アキラ:そうだった、この子天然だった……。
秋:天然じゃないよ!
アキラ:……(でも、美味しい展開です)
秋:……ごめんね。
アキラ:いや、いいよ(ありがとうございます!!)
崎人:この教室か!この教室からアキラの匂いがするぅ!
アキラ:(に、匂い?)
秋:あ、崎人くんだ。鬼ごっこ?
アキラ:いや、そういうわけじゃないんだけど……。ねぇ、もしかして俺って臭い?
秋:別に臭くないよ?えっと、それでどうして鬼ごっこ……。
アキラ:シッ。
崎人:あぁあぁあああきぃいいいらぁぁあああ。どこだぁぁ?
アキラ:(ひぃいぃいい!)
崎人:ここかあぁあ?
アキラ:(なにあいつこええええ!)
崎人:あーーーきーーーらーーー?
アキラ:(怖い怖いマジで怖い!)
秋:(なんかどさくさに紛れて凄い抱きつかれてる気がする……。これはパフェの数を増やしてもらえるかも……)
アキラ:(ほんと勘弁してくださいこういうのほんとダメなんだって。あぁ、泣きそう)
秋:(外で崎人くんがずっとアキラくんを連呼してるし、ほんとに仲がいいんだねー)
アキラ:(だ、ダメだ震えるな。こんな情けないところを女子に見せるわけには……っ!)
秋:(なんかプルプルしてるけど、そんなに笑い堪えてどうしたのかな? あ、もしかして崎人くんにイタズラして逃げてきたとか)
崎人:ぅーぁあああきぃいいぃぃらぁぁあああ。
秋:ねぇねぇ。
アキラ:なに?
秋:片棒担ぐから、パフェ二個で。
アキラ:(今それ言う?片棒?)
崎人:あぎらぁあああ
アキラ:OK体でもパフェでも何でも払おう。
秋:か、体はいらないよ!じゃじゃ、私だけ出てみるよ。
アキラ:いや、ロッカー開けたら流石に俺も見つかるよ。
秋:そこは、ほら。私の影に隠れててくれれば。
アキラ:体格的に無理がありすぎるよ。
秋:そっか。名案だと思ったんだけどなぁ。
アキラ:(アホだ……可愛い)
秋:……そうだ!
アキラ:シッ。
秋:ご、ごめん。
アキラ:……バレてないみたいだからいいけど……でも時間の問題だな。で、どうしたの?
秋:私が部員の子に連絡して誰かを呼ぶよ。準備室でも男子は入っちゃいけないことになってるから、それで崎人くんを追い出してもらおうよ。
アキラ:名案っ。天才爆誕。
秋:ヘヘー、プリンマキアートもお願いね。
アキラ:あ、うん。いいけど。
秋:ちょっと待ってね。
アキラ:(財布が……。いいや、背に腹は代えられん!)
崎人:見つけたらエンジェルキッスしてやるぜぐぇえへへへェ、ジュルっ。
アキラ:秋さんんんっ。好きなものもう一個追加してあげるからお願いしますっ……。
秋:任せてっ。……あー、んっ……でも、あの。スマートフォン取りたいんだけど、狭くて手が回らないの。取ってくれないかな?
アキラ:……え、え?
秋:だから、取って欲しいんだ。
アキラ:(ぬあああ!?な、なんだ!?なんだこのラブコメ感は!?ジャンプにもこんなマンガなかったっけ!?)
崎人:ハッ!アキラに危機が迫ってる気配がする。どこだアキラ!
アキラ:で、でも流石にまずいと言うか、大変嬉しいんですがなんといいますか……。
秋:え?なんで?いいから早く、見つかる前に。
アキラ:(お、俺には女子の体をまさぐるような度胸なんて……)
秋:早く早くっ。見つかっちゃうよ。
アキラ:で、でも……。
崎人:アキラあああ!出てこおおおい!まさか!?出てこれないような状態なんだな!任せろ俺の格好いいところを見せてやるそして今夜は俺の家で……ふふふ。
アキラ:(やってやるよこんちくしょおおおおおおお!俺の貞操のほうが大事だ!いつまでへタレてるつもりだ俺!)
崎人:ここか!?チッ、違ったか……。
秋:は、早く。もう近くまで来てるよ。
アキラ:わわわわかってる。
崎人:……そういえば。あのロッカー、怪しいな。
アキラ:(まずいっ)
秋:どどうしようっ。
アキラ:あはは、おわた……。
崎人:アキラぁ。へへへ。
アキラ:あぁ、女の子とロッカーの中で抱き合えて、俺、幸せだったよ……。来世は、鳥に生まれ変わるんだ。はは、ははは。
秋:もどってきてーー。アキラくんダメだよ正気に戻ってっーー。
崎人:ここかああああああ!?オーープンザアアアア!
アキラ:消えるひこーきぐもー、おいかけて、おいーかけてー。
秋:もどってきてよっーー。
崎人:ドオオオオ
佐代美:うるさいわよ!!
崎人:オ?
佐代美:オ?じゃないわよ。あなた、ここで何してるの?ここは男子立ち入り禁止のはずだけど?
秋:サヨミちゃんっ。信じてたっ。流石サヨミちゃん信じてたよっ。もう大好き。パフェの次にっ。
アキラ:……はやすぎる、あいずー。
秋:あぁ2番だ。トリのウタ2番入ってた。
崎人:何って、アキラを探してるんだよ。
佐代美:アキラくんを?どこにいるのよ。下手な言い訳してるんじゃないわよ変態。
崎人:変態とは失礼な。
佐代美:変態に変態って言って何が悪いのよ。どうせ女子の使ってた道具でも探して興奮してたんでしょ?あなたの奇声が美術室まで届いてたわよ。
秋:と、とりあえず助かったね。アキラくん。
アキラ:えきるひこーきぐもー
秋:わお、ラスサビだぁ。
佐代美:とりあえず。あなたには反省文を書いてもらうようだから、生徒会室まで来てもらうわ。
崎人:げぇ。そういえば今年から風紀委員なんだっけお前。
佐代美:お前?へぇ。五枚プラスね。
崎人:申し訳ありません、佐代美様!
佐代美:下の名前で呼ばないでくれる?
崎人:ふ、風紀委員長様。
佐代美:(大抵の男子なら名前で呼ぶなって言えば落ち込むのに、そういう反応はないのね。珍しい)
崎人:はぁ。アキラは見つからねーし委員長様には怒られるし、ついてねーなぁ。
佐代美:言ってくれるわね。もっと増やされたいの?もしかしてあなたはあれかしら、マゾヒストってやつかしら。
崎人:ま、まぁ、心に決めたあいつになら……ポッ。
佐代美:……。
崎人:ん?なんで距離を取ったんだ?
佐代美:いえ、別に個人の性癖に口を挟むつもりはないけど、程々にしなさいよ。
崎人:わかってくれますかぁ!?そうなんですよ俺のこの性癖をあいつは受け入れてくれないんですよ!!俺は俺!好きなんだから仕方がない!そう思いますよね!ね!!
佐代美:寄るな寄るな。
秋:(あのサヨミちゃんが圧倒されてる。珍しい)
佐代美:ええ。いいんじゃないかしら。
崎人:真面目に話してるんだよ?
佐代美:はいはい。どう思おうが何だろうが個人の自由よ。でも、強要はしないようにね。それは犯罪だから。
崎人:我慢せよと申すか。
佐代美:まぁ思春期の男子ならそういう気分になるのもわかるけど、きちんと節度を持って……。
崎人:仏さまぁ!!おぶふっ
佐代美:いきなり手を握らないでくれる?殴るわよ?
崎人:もう殴られた……。この……この気持ちをわかってくれたのは、委員長様だけだ!友達になってくれ!
佐代美:変態の友達はいらないわ。さっさと生徒会室に行きなさい。
崎人:あいつも俺のことを中々受け入れてくれないんだよ!
佐代美:……恋愛するのもいいけど、あなたはきっとやりすぎなのよ。押しすぎ。グイグイ行きすぎ。ガッツキすぎ。
崎人:ちょっ、ちょっと待って!メモ取る!
佐代美:(まぁ私も経験があるわけじゃないんだけど。ずっとアキラくんに片想いなわけだし……)
崎人:先生!続きを!
佐代美:あなたの現状を知らなきゃなんとも言えないわね。
崎人:そっか。……いやな。ついさっき、俺、告白したんだ。
佐代美:!? そ、そう。
崎人:あいつとは小学校からの付き合いで、中学辺りから無防備な姿を晒すようになって、見てて意識してきちゃって、それから……。
佐代美:ああちょっともういいやめて。何となく予想はついたわ。
崎人:おお!流石先生!
佐代美:つまりあなた、その子に恋仲になる相手として意識されてないってことでしょ?
崎人:そんな!?あっちから誘っていたという可能性は!?
佐代美:さっき告白したんでしょ?なんでここにいるのかわからないけど、その様子からして失敗。ならわかるでしょ。意識されてないのよ。
崎人:そ、そんな……。てっきり俺に気があるものだとばかり……。照れ隠しで逃げたのだとばかり……。
佐代美:逃げられた?
崎人:うん。告白したら逃げられた。だから追いかけた。
佐代美:制裁!
崎人:あべしぃっ。
佐代美:馬鹿じゃないの?嫌われるわよ。そんなことしたら。
崎人:ええ!?なぜ!?
佐代美:手の施しようがないわね。で?なんでこんなところにいるの?
崎人:それでこんなところまで追い掛けてきたんだけど。まさか裏目に出てしまうだなんて!シット!
佐代美:(なるほど、だから男子立ち入り禁止のここへ逃げ込んだのね。アキラくんとは二人でいるのをたまに見るし、名前を呼んでたってことは、その子を追い掛けるのを手伝ってたってところかしら)
崎人:なんてこった……。
佐代美:まぁ大体……いえ、全体像は理解したわ。とりあえず出直しなさい。阿呆すぎてちょっと気の毒になってきたし、出来るだけ手伝ってあげるから。
崎人:マジですか!?
佐代美:寄らないで、蹴るわよ。
崎人:手伝ってくれるんですか!?
佐代美:(マゾヒストだったわね、この脅しは効かないんだった)
崎人:もう、負ける気がしない!
佐代美:生徒会室へ行きなさい。
崎人:了解であります!失礼しまあす!
秋:(え?え?え?つ、つまり今の話を要約するとアキラくんを追い掛けてきた……崎人くんは……)
アキラ:愛と勇気だけが友達さ……。ハッ。あれ?崎人は?
秋:あ、戻ってきた。しかもマーチになってるし。……崎人くんならさっき出ていったよ。サヨミちゃんが助けてくれたみたいで。
アキラ:佐代美?あの風紀委員長の?
秋:う、うん。
アキラ:……どうかしたの?
秋:べべつになんでも。
アキラ:……?
/
ガチャン
\
佐代美:で、あなた達はなんでロッカーの中で抱き合ってるの?
アキラ:おぉ……。め、メシアよ……。
佐代美:メシア?
秋:佐代美ちゃーーーん。助かったよーー!
佐代美:ちょっと秋、いきなり飛び付かないでよ。
秋:サヨミちゃーーん。こんどポッキー分けてあげるね!ありがとうね!
佐代美:え、ええ。
秋:ありがとねー!ありがとねー!
佐代美:(なるほど、崎人くんの好きな子って秋だったのね……)
秋:サヨミちゃん大好きー!スリスリ
佐代美:くすぐったいんだけど。
アキラ:俺も、風紀委員に所属しようかな……。
佐代美:(ええええ!?う、嬉しいけど、唐突過ぎて、どどうしよう!そうなったら放課後、会う機会が増えて……「いっしょに帰ろうか」なんて言われちゃったり!!)
秋:サヨミちゃん?少し赤いけど大丈夫?
佐代美:だ、大丈夫よ。大丈夫。
アキラ:しかし、本当に助かったよ。もう少しで危ないところだった(俺が)
佐代美:ええ。あんな変態に襲われたら大変ね(秋が)
アキラ:事態は把握出来てるってことでいいのかな?
佐代美:ええ概ね。守る側に回ってくれて助かったわ(秋を)
アキラ:あぁ、そうじゃなかったら危なかった(俺が)
秋:サヨミちゃん、アキラくんを準備室に連れ込んだのは私なの!だから反省文は許してあげて!
佐代美:ええ。わかってるわ。
アキラ:(庇ってくれた上にここに入ったことまで許してくれるなんて。天使か)
佐代美:崎人くんを手伝うなんて言ったけど、節度は守らせるつもりだから、なにかあったら言いなさい。二人とも話は聞いてたんでしょ?
秋:うん!
アキラ:お、おう!聞いてた聞いてた。聞いてたよ。
秋:サヨミちゃんどうしよう、私!
佐代美:わかってるわ。
アキラ:う、うん。うん。俺もわかってるわかってる。
佐代美:(崎人くんが、秋を好きだなんてね)
秋:(崎人くんは……崎人くんは、私のことが好きなんだ!)
アキラ:(どういう状況なのこれ?訳がわからないよ)
佐代美:秋は天然過ぎるからただの鬼ごっことか勘違いしてるんじゃないかと思ったけど、わかってるならいいわ。
秋:天然じゃないよ!ちゃんと見てたし聞いてたんだから、ちゃんと理解できてるよ!
アキラ:(ねぇこれどういう状況なの?)
佐代美:で、ね。その……アキラくんの……風紀委員の話なんだけど……。
秋:え?なに?声が小さいよ。
佐代美:えーと。その、その……。
アキラ:(全体的に説明求む)
佐代美:か、帰りましょう!もうこんな時間よ、部活も切り上げて帰りましょう。二人とも疲れたでしょう?
秋:うーん。なんか色々ありすぎて疲れたよー。
アキラ:うん、疲れた。まじで疲れた。
佐代美:……はぁ。私の馬鹿。
アキラ:なんだって?
佐代美:な、なんでもないでっ、でっ、すわ!
アキラ:ですわ?
秋:ですわー、だって。カワイイーー!
佐代美:……ぅぅ。
アキラ:茶化さないで上げて。疲れてるんだろうし。早く帰ろ。
秋:はーい、ごめんね。
佐代美:(あぁ。優しい。風紀委員に入って欲しいなぁ。……はぁ、崎人くんに大きな口を聞いといて私がこれじゃ……)
アキラ:それじゃ、帰るか
佐代美:ええ。
秋:うん!
END
その夜。
崎人:ぐふふぅ。よーしよし。枕の下にアキラの写真を入れて、と。ぐふっ、ひゃっほおうい!夢の中でアキラとイチャコラするぞお!!胸が高鳴るッ!高鳴るゾオオオオオオアキラああぁぁぁあ!!
崎人:え? あ、あの。姉上?何をお怒りに……えと、ごめんなさい。静かにします。はい。……はい。……はい。……すみません。はい。申し訳ありませんでした。騒いですみませんでした。おやすみなさい。
片想いの射線上