雨のクリスマス
あなたがいなくなってから、ちょうど半年が経ちました。
いつもは雪が積もって盛り上がるはずの、12月25日のこの街。
たったひとつだけ違うのは、今日は大雨が降っていること。
コンビニで買ったビニール傘をさして、私はネオンで彩られた午後6時の街を一人で歩いています。
さっきまで浮かれていたカップルが、へこんだ表情で雨宿りしてる。
男の子のほうはかなり濡れちゃって、ちょっとかわいそう。風邪に気を付けて。
もう少し歩いた先では、今度はスーツを来た人たちが雨宿り。
パーティでもする予定なのかも。彼らの手にはデパートの紙袋。
でも、彼らの表情はあまり嬉しくなさそう。なんだか文句も言ってるみたい。
この雨のせいで、予定が少し狂ってしまったのかな?
あなたは、冬のこの時期がどうも苦手でしたね。
「いい大人のはしゃぐ様など見苦しい以外の何物でもない」なんて言ってたっけ。
酔っぱらって騒ぐ大学生のサークルを見かけた時のあなた、この世界の終わりかのように気味悪がった顔をしていたわ。気付いてた?
それでも、私が渡したプレゼントを少し照れくさそうに受け取ってくれたのは嬉しかったよ。
あなたといた時間は、本当にあっという間。
今はどこにいるのかも、私にはわからない。
けど、もしあなたがここにいるとするならば。
今日のこの街の様子を、どう思うのかしら。
はしゃぐ大人が少なくなって、嬉しい?
はしゃぐ代わりに文句言う人が多くなって、腹が立つ?
……あなたのことだから、寂しいって思うことはないんでしょうね。
けど、こんなことがあって喜びそうな人、私はあなた以外知らないな。
もしかしてこれって、あなたがやったことなの?
――なんて、馬鹿みたいなことを考えながら。
あなたがくれた、かわいらしい腕時計を私は今こうして見つめています。
雨のクリスマス