字融落下 ―生きる屍たち―
「田舎でよかった…」
私はポツリと一人ごちた。
中途半端に都市開発が進んだ街のショッピングモールに一人。いつものようにスナック菓子をあさり、チョコバーを齧り、展示品のソファに横になる。
『きっと私には関係ないことなんだ。』一人でじっとしていれば、そのうち日常が戻ってくる。そう考えているうちに一ヶ月が過ぎた。私が思うことは『生ものから食べれば食料は無駄にならなかったな…』ということくらいだ。実のところ、そこまで後悔はしていない。大人たちは『無気力な子供が多い』なんて世代を野次ったものだけれど、勇んでゾンビになった彼らこそ、今や私よりも無気力になったに違いない。
SNSや動画共有アプリで生き残りたちの投稿を確認すると、どうやら東京はもう壊滅的状況だ。
防護服に包まれた大きな人たちがヘリコプターから降りて行く。そのヘリコプターにはアメリカの国旗がはためいていて、どうやら軍人かなにかだと推測した。彼らは肩に担いだ火炎放射器でゾンビどもを燃やしていた。
あんな装備があれば、ゾンビを殺すことは容易い。今も新潟や青森、栃木を中心に田舎から復興は始まっている。
ほうら。私には関係ないことなんだ。一人でじっとしていれば、そのうち日常が戻ってくる。
………。
字融落下 ―生きる屍たち―
私が書き遺して、私が読み解く。
――溶け出した行間。空想の中に落ちてゆく――。
そして私に伝える。きっと、もうすぐ。