ふたりの絆(38)

結婚とホタルのお墓参り

アカリとホタルの縁で知り合ってから3年後の9月吉日。

秋の気配を感じる福井の山奥にあるホテルで、2人は無事式を挙げた。

たくさんの人達からの祝福を受けて。

翌朝のことだ。

「ヒカル、早く起きて。」

アカリがヒカルをせかせた。

眠い目をこすりながら起き、2人は早々に身支度を整えると、朝食も取らずに車に乗り込んだのである。

実は、2人で話して決めていた。

式が終わったらホタルのお墓に報告に行くことを。

向かう途中のチェーンの喫茶店で軽めの朝食をとる2人。

「ホタルがもしも人の言葉が話せたら何て言うかな。」

「おめでとうと言ってくれるよ、きっと。」

嬉しそうに答えるアカリ。

ホタルが眠る福井にあるお寺に着いたのがPM2時ごろ。

2人は仲良く手を繋いで、お墓に急いだ。

2人の指にはお揃いの指輪が輝いていた。

お墓に着いたヒカルは、お線香に火をつけ、そっと供え手を合わせた。

「ホタル、アカリと結婚したよ。ホタルが繋いでくれた絆のおかげだよ。」

ヒカルは心の中で感謝した。

アカリも神妙な顔で手を合わせている。

きっとヒカルと同じ思いであっただろう。

ホタルへの報告を無事に済ませ、この日は、2人が初めて一泊旅行した時に泊まった思い出深いホテルに宿泊した。

ホテルの部屋でくつろぐ2人だった。

アカリはヒカルに話しかけた。

「初めて会ったときから何かを感じていたの。ヒカルとはこうなる運命だったのね。」

ヒカルも答えた。

「色々あったから絆も深くなったんだろう。お互いを想う気持ちが最後まで残っていたから、ここまでこれたんだよ。」

ヒカルは続けていった。

「僕とアカリのキューピットはホタルだよ。本当の主役は、天国のホタルなんだよ。」

アカリはうなずいた。

「本当にそうね。ホタルが居なければ、ヒカルと知り合うことも出来なかったでしょうね。私にとってホタルは、ヒカルより大事な存在なのかな。」

笑顔で話すアカリだった。

「それは無いだろう。」

ホタルに嫉妬したヒカル。

ヒカルは何時も手帳の中に、ホタルの写真を1枚だけ入れていた。

その1枚を取り出すと、テーブルの上に置いたのだ。

ヒカルとアカリはホタルの写真に向かい、静かに手を合わせた。

「ありがとうホタル。」

同じ気持ちを伝えた2人だった。

そして、2人は優しく口づけをした。

写真の中のホタルが見ている前で。

翌朝、ホテルを出て岐阜へ戻る2人であった。

「今度はいつ来れるかな?」

アカリが運転中のヒカルに話しかけた。

「子供が生まれたら、また報告に来ような。」

はにかんだアカリであった。

                                           →「未来へ」をお楽しみに。

                                           ホタル:本当にふたりが絆を信じたからこそのつながりだったんですね。
                                               そして、本当の主役はホタル!物語りの重大な鍵だったんですね。
                                               最後が、ほっこりする2人の幸せそうな場面でした。

                                   -38-

ふたりの絆(38)

ふたりの絆(38)

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-02-24

CC BY-NC-ND
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CC BY-NC-ND