好きな人の秘密
好きになった人には 秘密がありました。
切ない銀杏の木
ある秋、すこし肌寒い。
銀杏の木も綺麗に色づいた。
今日は風が強い。
散る銀杏を眺めながらぽそっと思った。
恋したいなぁ・・・
叶うはずもない。20歳にもなって恋なんてしたことがない。
念願の大学デビューも果たしたというのにトキメキもしない。
いいな、と思うことすらない。
でも諦める訳にはいかない。
ため息つきながら好きな少女マンガを思い出す。
寒い。
くるっと方向を変え歩き出した。
意味もなくコンビニに寄って必要ないものを買って
やっと家に着いた。
買ったばかりの少女マンガを読み返しながら
また感動して泣いて・・・。
もったいない時間を過ごしては明日の学校から逃避する。
なんだか今日は気分が重い。
そして切なくなった。
夜になった事を窓が教えてくれる。
切ない胸を抱えて窓を開けた。
秋の香りがした。
散歩にでも行こうか、昼間の風の強さはない。
よれたスニーカーをつま先で叩きながら履いてドアを押す。
大学では絶対に履かない履きなれた靴にさえ切なさを覚えた。
もう慣れた足取りで階段を下りながら全身で寒さと不思議な切なさに身を委ねた。
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好きな人の秘密