家族

目覚めると、そこは見慣れた我が家だった。

「っはぁ!ゼェ、ゼェ、っごほ!」

今日は久し振りに嫌な夢を見た。家族で出かけて、その途中で・・・

ダメだ、思い出せない・・・

見慣れたベット、閉まりっぱなしのカーテン、愛着のあるパソコン・・・

「おにぃちゃん・・・へやからでてきて・・・?きゃっ!物・・・投げないでよ・・・っ・・・ご飯、置いときます。」

妹の悲しい声。だが俺には届かない。家族が最低だってこと知ってるから。

扉越しに聞こえる「元」母の声。

「海斗・・・なんでこんなになっちゃったんだろうねぇ・・・」

「・・・お前らのせいだろうが」

朝11時起床。パソコンを立ち上げる。ニートの溜まり場に行く。叩くだけでつまらん。子供向けのチャットへ行く。馴れ馴れしすぎる。

「はぁ・・・なーにやってんだか・・・」

俺がこんなんになっちまったのは8年前。俺には姉貴がいた。その頃は親父もまともだったし、俺もちゃんと小学校に通ってた。でもある時。

「オラァァァァァァァァ!!開けろやゴラァァァ!」

突然借金取りが来た。なんと親父が仕事に失敗して借金を背負ってたらしい。しかし知らなかったという言い訳は通じない。

ただひたすら頭を下げ続ける親父に俺は絶望した。借金取りは

「金が払えんのなら・・・お?その女ええなぁ・・・」

こうしてねぇちゃんがいなくなった代わりに我が家に借金取りが来ることはなくなった・・・。

姉貴がいなくなって親父が悲しんだのはほんの2~3週間の間だけだった。

3週間を過ぎるとまるで初めから姉貴が居なかったかのように振舞った。そして

「お前だけいればいいんだよ。だからあいつのことは忘れなさい。」

と言って姉貴のものを全部捨てようとした。それから親父は狂ったように暴力を振った。

そこで俺は初めて人の性格が一瞬で変わるところを見た。それから俺は家族を、いや人を信じられなくなった。

* * * * * * * * * * * * * * * * *

ある日知らないところから電話が来た。

「おい、あん時の借金取りだ。久しぶりだな。今日はあることをしらせるために電話した。お前の姉貴、紗季が死んだ。葬式の場所は・・・」

1時間後には親族の鳴き声が響く病室にいたー・・・

~帰りの車~

「うっ・・・なんで紗季が・・・」

思えばその時、俺がかぁちゃんを元気づけてればあんなことは起きなかったのかもしれない。



今思えば俺がかぁちゃんを慰めていればあんなことにはならなかったのかもしれない。

悲しんでいた母は前を見てなかったのだ。

キキィー!ドン!

その瞬間、俺は意識を失い、車は大破した。

* * * * * * * * * * * * * * * * * 

「んんっ・・・くわぁ・・・」

俺は大きくあくびをした。今までの状況を思い出し、俺は天井を見上げた。

かあちゃんは心配して俺の部屋に飛び込んできた。

「あんた・・・!死んでないかい!?」

変な質問だから「うるせぇ!ババァ、気でも狂ったか?」と言おうとした。しかし俺にも思い当たる節があったから喉の奥で止めた。

「・・・あんたも見たのかよ。」

もしかしたら夢だったのかもしれない。夢だったら姉貴も死んでないことになる。たのむ・・・見てないって言ってくれ・・・!

「・・・見たわ。事故にあったのよね・・・?」

嘘だろ・・・じゃあなんで生きてんだよ・・・

「ま、まぁ、とりあえず下行きましょう・・・。」

俺は連れて行かれるのに抵抗はしなかった。そして久しぶりに茶の間へ出たのだった・・・

* * * * * * * * * * * * * * * * * *

みんなが口を開かない中、親父がゴニョゴニョと言い出した。

「俺が・・・俺が・・・俺が・・・」

かぁちゃんが台所へ行くと、一枚の紙が置いてあった。

[お前たちは死んだ。しかし一人が死んだらほかの奴らは助けてやろう。]

みんなに見せると、家が明るくなり、森の中だった。

[お前らは戦って生き残れ。生き残ったものだけ助けてやろう。制限時間は30分。それまでにひとり死ななかったら全員殺す。]

「嘘・・・」

食料を探し、サバイバルセットを作り、残りは10分になった。

その時、突然親父が笑い出した。

「あーはっはっはっは!お前ら馬鹿だろ!俺があいつを売ったんだよ!気づかねぇなんてバッカwあーはっはっは!」

親父があいつ・・・姉貴を?ゆっるせねぇ・・・

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

俺はナイフを持って親父に飛びかかった。

でも・・・俺は本当に親父を殺したいのか?親父の前で止まっていると

「早く!俺を刺せ!時間がないんだ!早く!」

カランッ・・・

「やっぱり・・・俺には刺せねぇ・・・親父・・・」

その時、天から声が聞こえた。

「時間です。ひとりも死んでいませんね。なぜ殺さなかったのですか?」

みんなが声を揃えていった。

「家族だからです。」

「・・・いいでしょう。皆、目をつぶりなさい。」

次の瞬間、我が家の茶の間に戻っていた。

「戻った・・・のか・・・?」

俺はその言葉を言い終わると同時に親父に掴みかかった。

「姉貴を売ったってホントかよぉ!ふざけんなよ!」

「やめなさい!・・・お父さんは・・・私たちを助けるために言ったのよ・・・」

え・・・?

「ちがう!本当だ!だから早く殺せ!」

俺は泣いた。親父は諦めてなんかいなかったんだ。あのあと親父は追いかけて返してもらうよう頼んだんだ。でも返してもらえなくて・・・

余計な心配させたくなかったんだ・・・

「ごめん・・・おやじぃぃぃ!」

グサッ

「でも・・・海斗。お前は今まで暴力を振るったり・・・そのお前の遊び代で借金が出来たんだぞ?なのに悪びれもなく・・・」

「だから、死んでもらうことにしたの。」

「おにぃちゃん、いや、元おにぃちゃん。さようなら・・・」

家族って・・・なんなんだ・・・

家族

家族

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-05-06

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