今は前へ
この作品はフィクションです。
団体名、人物名は関係ありません。
初めての部活動
私は、中学に入学してからすぐに水泳部へ入った。理由は小学生の頃に少しやっていたから。私を含めて、新入部員は7人だった。
実際に入部してみると、練習はとてもキツく、新入生の私が付いていくのがやっとだった。先輩方と同じ事をして、同じペースを保てるようにして。私は練習を死にものぐるいで取り組んだ。
そんな中、私は同じ1年生のみんなとなかなか上手くいっていなかった。
ほかの1年生はサボっていた。
私1人が先輩に必死についていき、残りの1年生は部活を休み、ダラダラと筋トレをしたり、挙句の果てには部室で遊んだりしている。
私はそんな中でも、俄然やる気を持って取り組んだ。
「スイミングスクールの育成コースに行ってない自分が速くなって、みんなをビックリさせるんだ。」
そんな事を思いながら日々頑張っていた。
そんなある日。
同級生の部員の男子から1通のメールが来た。
『お前、みんなから悪口言われてるぞ』
幸せな日々
「母さん、父さん。おはよう。」
あの頃は幸せだったように思う。
まだ中学に入学して間もない頃だった。
順風満帆だった。
「あぁ、おはよう。」
「おはよう。これ弁当、持っていきなさい。それとこれは朝ごはん。」
「ありがとう、母さん」
私は母さんから手渡されたお弁当をリュックに入れた。
リュックを玄関において、部屋に戻ると、
「紗奈。学校はどんな感じだ?」
父さんは、読んでいた新聞から顔を出して、笑って聞いてきた。
「まだ入学して1週間だけど、友達も増えて、楽しいよ。」
私は笑って答えた。
本当に楽しかった。
友達も、先生も優しくて。
何も知らない私は、純粋に人を疑うことを知らなかった。
「そうか、それは良かったなぁ。」
父さんは嬉しそうに目を細めると、新聞に目を戻した。
これからの新生活にワクワクしていた。
私は自分の事にも自信を持っていた。
地元では名門の私立中学に入ったから、余計に自信があったんだと思う。
どこかで何かが崩れる音にも気付かず。
私はそのまま道を進んでいく。
今は前へ進まなければと、足を運ぶ。
やがてそれが自分の首を絞めることになるとも知らず。
身の覚えのない
「わる…ぐち…?…なんで?」
私は真面目にやってる…。
なんで…?
(同じ学年の他の部員とはあまり話さず、先輩と一緒にいる事が多いから、媚売ってるように見えてしまったのかな。)
私はそう思ったが、それは向こう側がサボってる事を棚に上げた言い分だろう。と思い、考えを打ち払った。
「あー…。俺もよく分からないんだわ。なんか放課後部活が終わったあと、お前が帰ったのを見届けてから、伏見に呼び出しかけられてな。」
「伏見…?」
伏見一樹…あの人は同じ新入部員だったにも関わらず、一番サボってる。
第一印象は明るい印象が強くて、なんだか面白そうな人だった。
けど、部活の欠席数は異常で、来たら来たで、私以外の同学年の部員に囲まれて、チヤホヤされている。けど、あの人が来たら、1年生がだらけはじめ、挙句の果てに練習を放棄する輩も出てくる。
そんなこんなで、私にとっては、伏見は部活の規律を乱す人。というイメージが強かった。
(最近コソコソなにか耳打ちをしたり、影で動いてると思ったら…)
予兆がなかったと言えば嘘になる。
私の目の前で、私をチラチラ見ながら、薄く笑い、同じ1年生に耳打ちしていたのが思い出された。
「そう。そんで、伏見が『櫻井紗奈の事が嫌いな奴、手ぇ挙げろ〜』って笑いながら言ってた。俺は手は挙げなかったけれど、ほかのヤツら全員手を挙げてた。」
「それ…、理由は聞いたの?」
私は、自分の直せるところがあるなら直したかった。
まだ入部して1ヶ月も経ってないのに、そんな事を採決されるのも理解出来なかったし、これから3年間共に過ごすのに、あんまりだと思った。
メールを送ってきた男子…早見駿からは、すぐに返事が届いた。
「俺も理由はあんまりだと思ったんだがな…『あんなクソ真面目に、部活やってまーす。って態度で取り組んでもらったら、こっちのやる気も削がれるっつーの。もっと気を抜けないのかねぇ。あ、スイミングスクール通って無いから俺らに追いつけないとでも思っちゃったかぁ?そうだとしたらマジウケるな!』って伏見が言うと、皆笑ってた。おれは正直笑えなかった。真面目にしてるお前が貶されて。理解出来なかった。」
ツラツラと書かれた文面は、鈍器で殴られたような衝撃を私に与えた。しかし、すぐに立ち直ると、早見に返信を送った。
「けれど、早見。あなたも真面目にしてると思うのだけど、あなたは何も言われなくて、私は何やってもダメなのはどうして?」
今は前へ