思い立って書きました随筆。

今、この部屋には私とストーブしか居ない。

私の背後で戸をガラガラと開ける音がした。
たった今を以て、この部屋には私と犬とストーブしか居なくなった。

早朝の寒さに凍えながら立ちすくむ、半袖の私に巻きつくように、
消えかけた蚊取り線香の煙が宙を舞う。

犬は依然として、私を哀しげな目で見つめた。

敷き布団の上に、無造作にしわしわの掛け布団が置いてある。
私はすることも特に見当たらないので、寝っ転がるとした。

床にカメラのバッテリーが落ちていたので、
机の上にあるリモコンの横に置いた。

私はそれからしばらく、段々と明るんできた窓の外に目をやったり、
特に意味もなく、周りをキョロキョロと見渡すことで忙しかった。

更に時が経ち、この私を時間は置いていってしまった。
私にはこの世界がとても憎い。

女尊男卑な、この世界が憎い。
時が過ぎてゆく、この世界が憎い。
朝と晩とがある、この世界が憎い。
庭に雑草が生い茂る、この世界が憎い。
こうして現実から逃げている、この私が憎い。

何度となく私は自殺を試みた。
この世界は理不尽だ。

ついさっきだって、自殺をしようとしたのに、
包丁の先が欠けているせいで、死ぬ気にならなかった。

そういうところが、あまりにも理不尽だった。

私は度々、読点の位置がわからなくなる。
遠目でみると、濁点と半濁点の区別がつかなくなる。
だから、この世界は理不尽である。

私の体はこんなにも冷え込んでいるのに、
外ではセミがもう、鳴き始めている。

よくセミを題材として詩を書くものがあるが、
私にはとてもじゃないが書けそうにないと思う。

セミがどう鳴いていようが、それは私にとって
何の意味も成さない為であるから、きっと書けないのだろうと、
今にとってつけたような理由を記載する。

案外、とってつけたような理由は的を射ているのではないか、と
ここでまた自分に文才があるかのような態度をとってしまう。

私は駄目な人だ。

幼い頃より、そうだった。
嫌なことからは逃げだし続けた。
親はそんな私を必死に止めようとはしたのだが、
それは私にとって、馬耳東風なものであった。

適当に相槌をうって聞き流す、簡単な作業だった。

私は幼い頃、剣道をかじっていたのだが、
やはり私にとって稽古は厳しいもので、
何度となく逃げ出した。

三年間剣道をやってきたなかで、
出席した日数より、欠席した日数のほうが遥かに多いと、
私自ら、そう言える。

ところで、私は頻繁に苛立つのだが、理由はお分かりいただけるだろうか?
恐らく、分からないだろう。

私には、両想いである女性がいる。
私にとって、その女性がとても憎たらしいのだ。

ではなぜ、両想いであるかというと、
どれだけ憎たらしい一面を持っていようと、それを補う魅力があるからではないかと、
これもまた取って付けたような理由である。

彼女のどこが憎たらしいのか、私は冷静に思案した。
表向きは真面目なのに、私に対して強く当たるところであったり、
すぐに他の男に目移りするところであったり、
私の友人は貶すくせに、彼女の友人を貶すと激怒するところであったり、
約束を簡単に破って、反省をしないところであったり、
一つ怒鳴ってみせると、泣いて自らの正義を主張したり、
彼女が怒ると、すぐに他人行儀な口調を使いまわしたり…

こうして書くと、何とも嫌な女ではあるが、
事実、彼女には魅力があるので、長続きしているのだ。

さて、ここまで一介の感情に乗せ、徒然なるままに書いてはみたが、
私の文は、読み易かったであろうか?

思い立って書きました随筆。

早朝に書きました。

思い立って書きました随筆。

早朝に、一気に随筆を書きました。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-05-06

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