ふたりの絆(36)
そろそろいいかな?(後半)
2人は、お腹が空いたので、ラーメン屋に立ち寄った。
休日ということもあって、混んでいる店内である。
2人は店のカウンターの1番奥に座ることが出来た。
「お腹空いた、ヒカルは何食べるの?」
「僕は塩ラーメンね、アカリは?」
「私は味噌の大盛りね。」
いつものアカリである。
しばらくして、2人の前にラーメンが置かれた。
何を思ったのか、アカリがヒカルにつぶやいた。
「ヒカルと私って、このラーメンのような関係だね。麺とスープ、両方があって初めて美味しくなるの。どちらが欠けても駄目なのよね。」
ヒカルは黙って聞いていた。
「そうだね、居て欲しい時にそばに居る。僕にはアカリが必要だけど、アカリには僕が必要なのかな?」
あえて言葉を濁す。
アカリは黙々とラーメンを食べていた。
その後、ヒカルとアカリの作るラーメンが完成したのは、そんなに遠い話ではなかったことは伝えておこう。
三重のアパートに着いた2人。
「ご苦労様、仕事頑張れよ。」
「ヒカルも身体に気をつけてね。」
お互いに労う2人だ。
「おふくろに感想聞いたら、また連絡するから。」
自宅に戻ったヒカルは、早々に聞いてみた。
「おふくろ、アカリのことどうだった?」
「かわいい子だね、愛想もいいし。」
アカリのことを誉める母親であった。
「あのストラップはどうしたの。」
「ヒカルが連れてくると言うから、探して買ってきたのよ、蛍が縁と言っていたから、子犬にしたの。」
母親の気遣いに頭が下がる。
「ありがとう、おふくろ。アカリ、とても喜んでいたよ。」
「ヒカルはあの子と結婚したいと考えているの?」
アカリといろいろあったことは話してあり、アカリの身に起こったことも全部知っている母親である。
そのうえで、息子に聞いたのである。
「決めるのはアカリだけど、できれば嫁さんにしたいと思ってる。」
「私は何も言わないから、後はヒカルの努力次第ね。」
「ありがとう、おふくろ。」
頭を下げるヒカルだった。
翌日の晩、ヒカルはアカリに電話を入れた。
「もしもし、お母さん何か言ってみえた?」
気にしていたアカリだった。
「『かわいい、いい子だね。』そう言っていたよ。」
「よかった、気にいってもらえて。」
電話の向こうで喜ぶアカリの顔を想像したヒカルである。
「あと、出来れば嫁に来て欲しいね。」
ヒカルはこの時とばかりに母親を出汁にして、アカリの想いを確かめたのである。
「え、本当に。」
言葉に詰まるアカリだった。
「ごめん、へんなことを言って。」
ヒカルはすぐに謝った。
「ううん、ヒカルが謝らなくてもいいのよ。そう言ってもらえたことが、すごく嬉しいの。」
ヒカルは罪悪感に包まれた。
その半面でアカリの想いが少しは判ったのが嬉しかった。
「ヒカル、またお母さんに会わせてね。ストラップの御礼も言いたいから。」
アカリはヒカルの母親のことを気に入ったようである。
「うん、近いうちにまた連れてきてあげるから。」
そう言って電話を切った。
アカリが今回のことをどう思っているかは、本人にしか判らないことだ。
それでも、結婚という言葉に一歩近づくことが出来たと思う。
3年目の春の出来事だった。
→「承諾」をお楽しみに。
ホタル:ヒカルは、アカリの気持ちがわかってほっとしましたね。
春という季節がまた、ロマンチックな気がします。
ヒカルはアカリと結婚できるのでしょうか!
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ふたりの絆(36)