初投稿です!
どうか、温かい目で見守って頂けたら幸いです^ ^

ピリリリ…
部活に行こうと、エナメルバッグを持った時、机の上の携帯がメールの受信音を鳴らした。差出人の名前に目をやると、"仲谷 優夢(なかたに ゆめ)"の4文字。その4文字に誘われ、無意識に携帯に手が伸びた。
メールの内容は至ってシンプルで、「今日会いたい。部活何時に終わる?」のみ。慶人(よしと)は教室の時計を見ながら、返信する手を動かして送信ボタンを押し、携帯を閉じて部活へと向かった。


「次は◯◯駅〜…」

車掌の軽快なアナウンスを合図に、慶人は降りる準備をしながらドアの目の前に立った。
シューとドアが開いた瞬間、ぞくぞくと人が降り、慶人もその流れに乗って電車を降りた。いつものように階段を登り、改札に向かって歩く。改札を出た突き当たりの所に、見覚えのある後ろ姿があった。

「優夢」

その見覚えのある後ろ姿に声をかける。優夢と呼ばれて振り返った彼女の目からは、涙が次々にこぼれ落ちている。
泣いていることが全くの予想外だった慶人はびっくりして、思わず訳を聞かずにはいられなかった。優夢の元に駆け寄り、肩に手を置いて、

「何だ、どうした」

と聞いた。優夢は、堪えても流れてくる涙を拭きながら涙声で一言、

「…言っちゃった」

とだけ答えて、慶人に抱きつき、慶人の胸の中で泣き始めた。


慶人と優夢は小学生になる前からの幼馴染みで、小・中と同じ学校に通い、とても仲が良かった。高校は2人とも別々の学校に進み、優夢は地元の学校、慶人は地元の駅から4駅離れた高校に通っていた。

お互い別の学校に進んでから、約2年が経とうとしていた時のこと。最近、優夢は慶人に "同じクラスに気になる男子がいる" と打ち明けていた。
約3年間、優夢のことをずっと一途に想い続けてきた慶人にとって、正直それは苦しかった。だが悩んだ結果、優夢の恋を応援しようと決意した慶人はあえて何も言わず、ただ "頑張れ、応援してる" と優夢に言い続けてきた。
もし、優夢がそいつと付き合ったら、俺はそれを応援する。そう決めて、優夢への想いを必死に忘れようとしていた矢先だった。

「…ダメだった」

泣いているせいか、声が震えている。慶人の胸の中で泣く優夢に、慶人は手をまわして抱きしめないよう、必死に堪える。なぐさめようと試みるが、適当な言葉が見つからない。慶人は自分の気持ちよりも、泣く優夢の姿を見る方がよっぽど辛かった。
優夢は泣き止む気配がない。目の前で泣く優夢の姿を見て、慶人の中の堤防が決壊した。抱きしめないように、と我慢して、制服のズボンを掴んでいた手が優夢の方にまわされ、その手でぎゅっと強く優夢を抱きしめた。
優夢を意識するようになってから約3年間、慶人は優夢にまともに触れることも出来なかった。他の男が好きでもいい。俺のことは嫌いでもいい。これ以上のことも、これ以下のこともしないから。本当に今のこの時だけだから…

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-02-17

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted