第16話 ソウルメイト~突然の別れ~

それから一週間後、希美子は夢を見た。


ここしばらく夢らしい夢を見てなかった希美子…それは隆乃介と気持ちが通じたあたりからで、それ以来と言っていいだろう。


何かを一生懸命部屋の中で探し物をしている夢…それも大事なものをものすごい勢いで探している希美子だった。



「ない……どこにあるの?」


部屋の引き出しから何から開けまくったり、物の下をひっくり返したりととにかくその探す行動はすさまじかった。


「…!あった……!!」


と、そこで目が覚めた。
目が覚めて希美子は驚いた。


部屋が…散らかっている…。


首元には隆乃介の形見の、ペリドットの施されたペンダントがついていた。


「まさか、これを探して?」



さくらこが希美子の家へ入った一週間前。
『ちょっと工作するから、希美子ちゃん、そのペンダントを外して。それから部屋は良いよって言うまで入らないでね。』

と2時間くらい、さくらこが作業していたのを思い出した。

両親は共働きなため、家におらず、その間は隆乃介と二人でお茶を飲んでまったりしていた記憶がある。


カメラと言ってもどこに設置したかもわからないくらい、うまいこと隠し、ペンダントも分からない場所へ強制的に隠してあった。



それを探していたのだろう…ただ夢の中では何を探していたのかはわからなかったが。



不意に希美子の携帯が鳴った。隆乃介からだ。

「もしもし…起きた?」
「えぇ…隆乃介さん…実は変な夢を見て…」
「わかってる。」
「え……?」
「希美子が何かを一生懸命探している夢でしょ?俺も見た……」


やっぱり、隆乃介さんと私の夢は繋がっているんだわ…そう確信した。

「さくらこに連絡する。今日は予定とかある?大丈夫?」
「え、あぁ…特にないので大丈夫です……。」


隆乃介がさくらこに連絡し、さくらこが遠いながらも車を飛ばして来てくれた。

「ありゃぁ…ずいぶんやらかしたねー。ちょっとパソコン借りていい?」
「あ、はい…どうぞ。」

さくらこはまた隆乃介と希美子を部屋から出し、作業をする。


10分ほどしてさくらこは希美子のパソコンを持ち出して二人のいるリビングにやってきた。

「夢での話と、実際よなかにとった行動がこれ。」


とここ一週間分の希美子の寝ている間の行動を二人に見せた。
やはり昨日の行動がいちばん活発に動いている…。


その夢も隆乃介が見ているということは夢でも二人がつながっているということになる。

「リンク…ねぇ…」

ぽつりとつぶやいてからさくらこは分析した結果を二人に話した。


「やっぱり二人の繋がりが強くって、その繋がりのきっかけでもあるそのペンダントを探してた…と考えるのが一番無難かな。」
「まぁ、そうだろうけど……。」
「気になっているのはこないだ言った異常行動か否か?って部分?」
「……まぁ、そうだな。」

「精神科へ行ったら?」

え?と顔を見合わせる二人。隆乃介は希美子が不安になっているのがわかったらしく反論しようとしたがすかさずさくらこが口を開いた。

「ってのは冗談で、正常範囲内だよ。あの隠しカメラは私が改良して作った脳内のバイオリズムを計れるようにもしてあってさ。
バイオリズムも正常。ただ…夢でリンクするのはそれだけ二人の繋がり…絆が深いってことになる…そのきっかけが…」

さくらこは希美子のペンダントを指さし、

「これでしょ?これ関連での夢なら隆乃介も見ることができる…いわゆる…ソウルメイト、ってやつじゃない?」
「ソウルメイト…?」


二人は顔を見合わせた。

「そう、魂で繋がっているってこと。人間には前世、前々世から繋がっているソウルメイトがいるって聞いたことない?」
「そういえば……」

隆乃介がはっとした。

「大学の心理学でやった気がする……生まれる前からの運命的な繋がりを持った人間が必ず一人はいるって。」
「そう、それが希美子ちゃんになるわけ。それなら、どんな事象もつじつまが合うでしょ?」


希美子は二人の会話を聞いて、納得がいった。
今までの夢での出来事も、今の隆乃介との関係も何もかも。


ちょっと頬を赤らめる希美子。

それを察したのか、さくらこは
「私ができることはここまで。納得がいったようでよかったわ。隆乃介……このお礼は高いぜ~。」
「おいおい…友達だろ?金出すのかよー!?」
「冗談冗談。あははは。ま、ともかくせっかく見つけたソウルメイト……逃すんじゃないわよ?」


そういってさくらこは帰って行った。


ソウルメイト…そう思ったら余計に意識し始めた二人…。


「な、なんか…でもよかった、謎が解けて。」
「そ、そうですね……」
「実は、まだ話してなかったんだけど…」

隆乃介は希美子にこう言った。

「松岡先生が戻る前に学校を去ることになった。」
「え……。」
「別に希美子がどうとかじゃなくて、俺が行ってた大学で講師をやらないかって誘われて…それで悩んでたんだけど、
今のままじゃ希美子に迷惑がかかるし、この関係は終わらせたくないから……。」


あまりの衝撃発言に驚いた希美子。
「いつ…やめるんですか…?」
「……来週……もうほかの先生に引き継いでる。」
「そんな、急に!?」
「大丈夫、家は隣だし、連絡もする。だから心配しなくていいから…」

希美子は憤慨した。

「どうして…話してくれなかったんですか?私が子供だから?そんなに信じられなかったから?
迷惑かけたくない?…私だって前もって言ってくれればわかりますっ!そんなに子供じゃないですっ!!」

「いや…そういうつもりじゃ…」
「帰って下さい…帰って!!」


希美子は隆乃介を家から追い出した。
バタンとドアを閉めた希美子は涙が止まらなかった。

隆乃介は、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。

第16話 ソウルメイト~突然の別れ~

第16話 ソウルメイト~突然の別れ~

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2012-05-06

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