インセスト
掌編。初投稿です。短過ぎる話なので、すぐ読めます。
貴方は私を愛してくれますか?
穢れた身体とこころ。
貴方が愛し過ぎて、今にも壊れてしまいそうなんです。
「兄様、もう少し傍に居てもいい?」
乱暴に抱かれた身体が軋む。
でも、それがこの不器用な人の愛情表現なんだ。この言葉を自分に言い聞かせて何年経つだろう。
幾ら年月が経とうと、この人から離れる事は出来ないのだから、乱暴に扱われることさえ欲しているのだろう。
ある種、マゾヒスティックな歪んだ性癖に、自嘲の笑みが零れた。
「好きにしろ。」
ボソリと呟くと、私に背を向ける。
今日は幾分機嫌がいい。
機嫌が悪い時は返事さえしない人だから。
背丈はそれ程無いが、欲目なのか兄の背中は大きく見える。
そっと背中に凭れて脈打つ鼓動を聴いていると、何だか無性に泣きたくなった。
溢れ出る涙を拭う事無く、ほろほろと流す。
「何、泣いとるん。いつも通り抱いただけやのに。どっか痛むんか。」
端からこの光景を見たら、なんて自己中で酷い男なんだろうと感じるかもしれない。
それでも、私にとっては世界で一番愛しい男なのだ。
暴力的なセックスも、
気まぐれな優しさも、
私の胸を掻き乱して止まない。
「どこも痛みません。ただ、兄様が好きすぎて泣いてるんです。」
いつまで一緒に居られるだろう。
神様、どうか私達を引き離さないで。
兄様。ずっとずっと、私を傍に置いていて…
貴方なしじゃ私は生きていけません。
このぬくもりを離したくはない。
兄様、約束よ。
死ぬまで一緒に居たいの。
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