信じてるの証
今一信頼のない弟について。
それでも私は、彼を信じる。
今月分、母に渡さなきゃね。
そう思って家を出たら、弟がひょこひょこと着いてきた。
なんでも自分の口座を作ってチャリ銭を貯金したいとのこと。
黄色のシャツに、オーバーオールを着ている奴の足元は百円均一で買ったサンダル履きである。
かく言う私は、茶色の便所サンダル。
都会のいいところは、そういったこだわりを分かって許してくれるところだ。
カッコつけなくて丁度いい。
ついた先の郵便局で、私はお金を下ろし、「小遣いや」と言って弟に千円渡した。
「ありがと」と言ってチャリ銭だけ貯金してポケットに突っ込む奴。
きっとツタヤでDVDでも借りて、煙草でも買うんだろう。
そう思って、今度は貯金箱をお姉さんに差し出し、貯金してもらっていた。
するとそこへである。
「全員動くんじゃねえ!」
メットを被ったおっさんの下着シャツに楽そうなパンツをまとったすね毛ぼーぼーの強盗が入ってきたのだ。
手には包丁。
あ、どうしよ。
咄嗟に考えた。
外では弟が不思議そうな顔で店内を覗いている。
私は、弟にジェスチャーで「逃げろ」と伝えた。
しかし奴は勇敢にもひょうひょうと入ってきて、からんからんという音に振り向いたおっさんのメットの顔面に強烈パンチを繰り出した。
「おっふう!」
吹き飛ぶおっさん。弟は包丁を持った手に足をかけてひねり上げながら、「ギブ?ギブ?」と聞いている。
「警察警察」と皆があわただしくする中、そういやこの子、武術習ってたわ。そう思った。
警察の調書作成に付き合い、終わった帰り道。
んーっと伸びをする弟に、それでも縁を切ってしまって誰も友達もおらず、煙草が生きがいと言うのが信じられなくて、「あんた、彼女の一人でも作りなさいよ」と言うと、白けた顔で「きょーみない」と言った。
帰り道、惣菜屋によって焼き鳥一本ずつ買ってやり、二人で食べた。
「お姉ちゃんありがとう」
こんな君が壊れてるなんて信じられないよ。
そう、私は思いながらも、今日が楽しくてよかったと思った。
信じてるの証
彼の技術が活きる時が来た。