永遠の青、刹那の赤
ー彼女の一瞬が、彼を永遠にしたー
淡く切ない、しかし綺麗な物語になればと思います。どうか最後までお付き合い下さいませ。
Prolog
さらさらと降る雨を睨みつけるように顔を上げると、やっぱり空は灰色で、なおさらに君と見た空を思い出す。きっとどこまでも青かった空を。
この空にたった一滴の純粋な雨を落としたとして、それで空が晴れるわけはないのに、僕の中身はたった一滴で君に染まってしまったからなんだか悔しくて、少し可笑しい。
僕が空に負けるとは。ちょっと前の僕だったら空なんかを相手取る事すらなかっただろうに。
「そんなのつまんないよ。君なんてちっぽけな存在、たった一人で生きていけるわけないじゃない」
そんなことないさ。一人だって生きていける。生きてこれた。
「本気で笑うのも、怒るのも泣くのも、一人ではできないの」
そんな事しなくたって、生きていくことは容易だ。むしろそんなもの邪魔だ。
-…そう思っていた。
「だからね、私が一緒にいてあげるから」
君は酷い人だ。一滴で十分だって言ったのに、ぽたぽたと君を僕に落としていく。おかげで染み付いて、少しだって取れない。
「ずっと一緒に、君と、“生きる”ってことをどこまでも追いかけるよ」
最初で最期の君の嘘は、深く深く僕に突き刺さって根を張った。
そして、嘘をついた事を謝るように、君は僕に“青”と“赤”の二色を残して消えた。
“青”は君の色
“赤”は君の最期
僕はこの二色と灰色の中で、この胸に君を飼って呼吸をしている。
不満なんてないけれど、ただ、一つだけ何かを願ってもいいのなら、
無彩色の世界に戻ってもいいから、君と“生きた”日々を返してはくれないだろうか。
「…セツナ」
僕は君の名を口にする。
頬を伝う生温かい涙と、いつの間にか強くなって懸命に僕を叩く冷たい雨とが、僕の中の君の色をいっそ綺麗に洗い流してはくれないだろうかと思ってから、僕はそっと目を閉じた。
永遠の青、刹那の赤
残念ながらbad endです。
bad endですが、嫌なbad endにならないように頑張ります。