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物語作家七夕ハル『紙は死んだ!』

 ある日、私の家の玄関のチャイムが鳴った。見知らぬ男が挨拶してきた。「こんにちは」私は、戸惑いながら、挨拶を返す。二人の間に流れる沈黙。男は、茶菓子を私に差し出す。え、何で?私は、男と初めて会ったのだ。さらに、私に一緒に住んでいる家族はいない。何かの間違いのはずだ。ポカンとして玄関に立っていると、男は茶菓子を玄関に置いて、「失礼します!」と言って出て行く。一体何だったのだろう?私は、茶菓子を見ると大嫌いな甘い物だった。やはり、男は、私を誰かと間違えたに違いない。それでも、隣の部屋には、誰も住んでいないし、私の部屋は、角部屋である。ははぁ、さては、一階と二階を間違えたな、と妙に納得してしまう。ただ、ふと茶菓子を見ると、私の名前が書いてある。どういうことだろう?このマンションの一階に私と同じ名字の人がいただろうか?しばらく考えるが、そんな覚えはない。あ!!そこで、私は、インスタントラーメンを作っていたのを思い出し、慌てて、キッチンに戻る。お湯から蒸気が出て、ラーメンは、ふやけている。これじゃ、まずいな。私は、不機嫌に、仕方なく、伸びきった麺をラーメンどんぶりにうつし、粉末スープを入れる。味の良くないラーメンを食べながら、テレビ。ニュースを、やっている。丁度、番組の最後の方だった。「この度は、誤って関係のない住所と名前を表記してしまい申し訳ありませんでした」メインキャスターのNが謝っている。そして、天気予報。明日は、雨か。
 また、チャイムがなる。珍しいな、こんなに来客があるなんて。私は、意外に思いながら、玄関に出る。ドアを開けると、またまた一人の男が立っている。またも、見知らぬ男だ。「あのっ。これ!!」今度は、封筒だ。「あの、何かの間違いじゃないですか?」私は、苗字を告げると、男は、「間違ってません。これ!!どうぞ」と言って、封筒を無理やり押し付けるように去っていく。男が行ってしまうと、私は、封筒の中身を見る。すると万円札が、十枚入っている。慌てて、出て行った男を追いかける。「おいっ!君!」しかし、もう男の姿は、どこにもない。何と、素早い男だ。まったく訳がわからない。私は、さっきの茶菓子と封筒を、とりあえずリビングに持ってきて、考える。
 しばらくして、私は、仕事に出かけるために、スーツを着て、家を出る。すると、家の前には、長蛇の列だ。「なんだ?何かあったんですか?」声をかけると、「あなた、名前は?」と逆に質問される。「Hですけど」何で、列に並んでいる人が私の名前に興味があるんだろう、と思いながら、答える。「あら!!あなたが?大丈夫よ!!娘さんは、助かるわ!みんなが付いているわ」私は、何のことを言っているのか、わからなかったので、とりあえず、一点だけ否定する。「私に娘なんていませんよ」「えっ!」途端に、その人の反応が変わる。その人は、すぐに列の先頭で、みんなから何やら集めている男に声をかける。男は、鬼の形相で走ってくる。私は、危機感を感じて、逃げようとするが。列に並んでいた人から取り押さえられる。「何するんだ!!離せ!」叫ぶが、数人に抑えられ、身動きがとれない。「あんたHさんだろ?病気の娘さんがいないって?嘘をついたのか?」走ってきた男は、怒っているらしく、とても低い声だ。「何のことです?」「やっぱり詐欺だよ。これ。警察につき出そう」「新手の詐欺ってやつか?テレビ局もだまされたな」口々に周りの人々が、言い出す。
 すぐに警察が呼ばれ、私が解放されたのは、ずっと後になってからだった。

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物語作家七夕ハル。 略歴:地獄一丁目小学校卒業。爆裂男塾中学校卒業。シーザー高校卒業。アルハンブラ大学卒業。 受賞歴:第1億2千万回虻ちゃん文学賞準入選。第1回バルタザール物語賞大賞。 初代新世界文章協会会長。 世界を哲学する。私の世界はどれほど傷つこうとも、大樹となるだろう。ユグドラシルに似ている。黄昏に全て燃え尽くされようとも、私は進み続ける。かつての物語作家のように。私の考えは、やがて闇に至る。それでも、光は天から降ってくるだろう。 twitter:tanabataharu4 ホームページ「物語作家七夕ハル 救いの物語」 URL:http://tanabataharu.net/wp/

  • 小説
  • 掌編
  • 冒険
  • アクション
  • サスペンス
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-02-11

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