眩暈

雨宮吾子

 ああくらくらと眩暈がします。こんなところで立ち止まっていては危ないのにどうしたことでしょう。手すりを求める私の手は虚空を掴むばかり。私の身体は奈落の底に落ちていくんです。きっとそうなるのです。
 現実の世界がどんどん遠ざかっていきます。階段の脇を行く車の走行音も火事現場に急行するヘリの音もファズをかけた音の塊となって私を包みます。そしてきっと私は階段を転げ落ちていくんです。
 ぱっと私の手を包む何か。この温かみを最後に感じたのはいつだったか。冴えないけれど優しい目をした誰か。私を助けてくれたのか。それは分からないけれど私は眩暈の中できっと恋に落ちていくんです。

眩暈

眩暈

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-02-09

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