此の世からクソガキが消える為に謳います
夕焼け小焼けで さようなら
先生 さよなら
皆さん さよなら
進学校に通う子供は
何処かで自分は他の子達とは違う、
エリートなんだ、と思っている
其の似合わない制服の着こなしと
すんと済ました目がそう謂って居る
サッカーをしている男の子は
何処かで自分は他の子達よりも
イケてると思って居る
体育の授業でゴールを外した眼鏡くんに
ドンマイ、と言う励ましは
やっぱりお前は愚図だなあ、って
此の干からびたグランドに木霊する
ダンスをしている女の子は
何処かで自分はクラスで一番
お洒落で可愛いと思って居る
親に出して貰った金で買った
GODIVAのチョコレート五つ入りを
サッカー少年に渡しながら
其の色気の無い身体に不釣り合いな茶髪を
捏ねくり廻す仕草がそう謂って居る
ピアノが弾ける子は
何処かで自分には絶対音感が在ると思って居る
救急車のサイレンはB♭ G B♭ Gだとか何とか
じゃあ此の机を叩く音は?と訊くと
其れは音階が無いとか言っちゃって
其れを世間は相対音感と呼ぶのも知らず
自慢気に古典音楽の楽曲名を語る
其の唇はワンテンポ遅れで聴こえて来る
水泳をしている子は
何処かで自分は絶対死なないと思って居る
一日に数キロ泳げた処で
見なよ、子供の水死率
其のふざけたテンションと
根拠の無い自信に溺れて
毎年何人の子が死んで居る事か
英語を習っている子は
何処かで週に一度の英語の時間は
自分の物だと思って居る
聞いても無いのに
正しい発音はこうだ、とか言って
悪いけど耳元で唾飛ばさないでくれるかな
汚い お前何て黙って
ALTのアルファベットに成れば善い
バレエをしている子は
何処かで自分が一番有能だと思って居る
ステップが踏めるから高跳びが出来るし
振付を覚えられるから漢字も覚えられる
其の上自分の家が周りの子達よりも
ちょっとばかし上流に居る事を
父親の給料額を披露して露骨に自慢する
何時まで爪先立ちして居るつもりなんだろう
歌が上手い子は
何処かで自分は有名に成れると思って居る
放課後教室の窓を開けて
カーテンを掠める風に向かって歌っちゃって
風に乗せられた歌声は廊下まで響くけど
惚れる様な声なんかじゃない
お前が自分に惚れて居るだけだ
どの子もあの子も皆そう
皆自分が特別だと思って居る
でもお前ら全員皆唯の小便臭いガキで
「僕達の未来を守って」とか云われた処で
残念だったな、大人達は
お前らの未来なんてどうでも良い
守る気なんて更々無いんだ
だって此奴らも数十年前は
お前らみたいなクソガキだったから
自分が一番 自分が特別
自分さえ良ければ其れで構わない
そんな奴らが数十年や其処らで
お前らの未来を守るに至る訳が無い
どうせ生まれてから死ぬ迄ずっと
自分は特別で終るのだから
如何にかしたいならお前らがするしか無い
貸せる手など余って無いから
教室の隅で泣く子に気付かないお前らに
貸せる手など余って無いから
持ち物全てに落書きされた
お古の服を馬鹿にされた
其れでも一番勉強して居た
其の事に気付いて欲しかった訳じゃ無い
唯、私も特別で居たかった
自分が一番だと思ってみたかった
特別な子供で居たかったのに。
此の世からクソガキが消える為に謳います