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僕は故郷をすてたことなんてなかった
君のいないひだまりに泣いたこともないし
母の煩わしさを寂しく思ったこともない

だから、東京タワーが好きだった
赤く燃える東京タワーを
遠くからただ眺めているのが好きだった

星が見えないなんて気のせいだよ

君が孤独をこの街のせいにして
死んでいったゆめたちを悼んでも
僕にはなんの関係もない

君が見上げようとしもない狭い空の中
ビルに隠されてオリオンは欠けているけれど
今日も東京タワーと輝いている

死ぬなんて言うなよ
明日またここで会おう。



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  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-02-07

Copyrighted
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