パリ子最終話

桃タクロウ

 俺は桃タクロウという名前だ。今年で34になる。でも、初めて会う人は絶対に信じてくれない。70歳と言われることもある。俺はあのパリ子という女に騙されたのだ!
「パリ子を殺して、俺も死ぬ!」
と独り言を言う時があるようだ。
パリ子と出会った当時、俺は塾講師だった。生徒には人気がないが、実際より若く見られていた。給料日には、キム太郎という同僚と錦に遊ぶのが習慣だった。
 その月は塾長から、コマを半分に減らされた月だった。キムに慰めれれながら、浴びるほど酒を飲んだ。早朝に公衆便所で寝ているところをパリ子と名乗る女に解放された。絶世の美女で、「結婚できるなら死んでもいい」と本気で考えた。朦朧状態だったので、完全に目が覚めた時はラブホテルだった。俺は全裸の状態で、机にはパリ子の名刺が置いてあり、俺の似顔絵が書いてあった。
 次の月はさらにコマ数が減った。またキムと錦で吐くまで飲んだ。そして、次の日の朝にはラブホテルのベットの上だった。それから、パリ子とずっと一緒だ。それから毎日、ウィスキーを飲んだ。塾は酔った勢いで出勤してクビになった。キム達も一緒に飲むどころか、酒自体をやめるように言う。でも、俺にはパリ子がいる。今日も夢でパリ子と会うだろう。そして、パリ子はこう言うだろう。
「貴方は腐ったきびだんごを食べてしまったの。もうどんなに苦しくても、食べ続けるしかないわ。明日も竜宮城で待ってるわ。」
 現在、俺は施設にいる。酒がないのは良いことだが、時々とても苦しくなる。振り返ると、
「もう、諦めましょうよ。失敗例をいくつあげれば解ってくれるのかしら?」
今日の軽作業が終わり、机を見るとメモが書いてあった。
「桃ちゃん!お願いだから来て!鬼に襲われているの。名古屋港の底だけど、ハイボールを飲めば水中でも息ができるのよ。鬼を退治すれば貴方は英雄よ!今までのことがチャラどころか、お釣りがくるわ。」
周りの制止を振り切って、堀川に飛び込むと、俺は月にいた。ロクでもない奴と毎日お祭り騒ぎだ。彼らは浮気してきた野郎や風俗やっていた女ばかり。毎日、クレーターで酒を飲む。面白いことに彼らは毎日独り言をつぶやく。
「パリ子にさえ会わなければ!」

パリ子最終話

パリ子最終話

  • 小説
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2016-02-07

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