Without Nothing
STORY
高校二年生である西園諒は学校生活に慣れ、毎日のように変わらない日々を送っていた。そんな諒が生活する現代は少し不可解な事件が多数発生していた。首都圏全域で起こる行方不明になった人々。
存在が消える。そんなことはあり得ない。例え死んだとしても死んだ側の人に人間関係が無かったはずがないからだ。人間関係がある限り多少はその人の記憶として死んだ人と過ごした時間が残されるのだろう。そもそも存在って何だろう?人が同じ空間に生き、呼吸をすることだろうか。それは少し思い違いかもしれない。存在は他人に自分を認識してもらわなければあるとは言えないだろう。
首都圏全域で起こった謎の事件。それは人々を行方不明にする。犯人がいるかも定かではない。なぜなら行方不明者は3000人に達したからだ。一人でどこまで誘拐できようか。警察の捜査も入り、見つからないはずがないだろう。
だったら・・・・・3000人は何処へ?
そんな信じるのもアホらしい事件を諒が捜査するようになったのは去年の冬だった。
雪の降る寒い夜。
凍りつく空気。
そんな中幼馴染である美津枝琴音は消えた。半年たっても帰らない琴音の消息はもはや無いといってもいいかもしれない。
ある事件から支えてくれた恩人。
諒の・・・・好きな女の子。
そんな琴音を諦めず、例の事件に巻き込まれたのではないかと、諒は考える。
だが・・諒が例の事件に巻き込まれることになって・・・。
Accident①
「今日から高校生なんだな・・・。」
我が校の正門でそう呟いた日からもう一年が過ぎていた。僕も高校二年生だ。だからといって変わったことは何もなかった・・・いやはずだった。
あの日。
あの日は凍りつくような空気で雪が降っていた。永遠に降り積もる雪。交通は混乱し大渋滞で、天気予報も外れた。
ちょうど僕は学校から帰宅する途中だった。さすがに予想外の天気に無防備だった為に相当寒く、少し小走りで帰っていた。
前は真っ暗で霧がかかり、僕はほとんどやみくもに走っていた。
ああ・・・。天気予報の馬鹿野郎。
そうやって天気予報を罵倒してみたけど、天気が変わるはずもない。考えてもみれば、天気予報はあくまで予報だ。予測なのだから外れることもあるのだ。でもそれはそれで無責任な気もする。僕たちが天気予報に固執しているのもいけないんだろうけど。
そんな頭の中でグダグダと考えていると、何やら明るい光が見え始めた。
何だろう?
それは単なる点滅信号だった。だけど今まで明かりもない雪の降り積もる暗黒の世界を走っていた僕にとってそれは天使の光と呼ぶべきもの。
「寒い・・・。」
これは下手したら凍死するんじゃないのか・・?とか考えてみるけど、やっぱり天気は僕に厳しい。天気は僕を殺す気なんだね。
ふとため息をつくと携帯がなった。
母からだった。
早く帰ってきなさいと。
帰って来られるならとっくにいるんだけどね・・。
とりあえずわかったとメールを送り僕はまた走りだした。何が悲しくてこんなに走らないといけないんだ。僕は息が切れるのも忘れるほど、凍りついた空気を浴びながら全力疾走した。
Without Nothing