拝啓
拝啓
あなたがこの手紙を読んでいるということは、なんて書き出しは止めておきますね。
横で眠っている人に手紙を書くのは何だか変な気持ちで、突然あなたが目を覚ましたらどうしようかと、少しドキドキしています。
私たちは、もうすぐ離れ離れにならなければなりませんね。
あなたと笑い合えない。あなたが泣いているのに頬を撫でることもできない。私の声があなたには届かない。そんな場所に、私は1人旅立たなくてはなりません。
どんなに離れていても、空は同じなのでしょうか。どんなに離れていても、心は繋がっているのでしょうか。しかしそれでも私は、どんな時でもあなたの隣で同じ空を見上げたいし、あなたの隣でどんなにあなたが大切か伝えたいと思うのです。
我が儘なのでしょうか。我が儘なのでしょうね。あなたを困らせるつもりはないのです。ごめんなさい。
私は1人で旅立ちますが、あなたは1人で生きていかなければならないことはないのです。私がいなくなり、そして誰もいなくなるあなたのその隣は、私じゃない誰かの居場所にしてください。私があなたを求めたように、その人もあなたを求めているのでしょう。そしてその人は、あなたにとって必要な人なのです。
叶わないと分かっていても、まだあなたの隣にいたいと泣き叫んでいる私がいます。今、眠りの中私の名前を呟いたあなたが、愛おしくて仕方がないのです。
どんなに願っても叶わないのなら、これだけは祈ります。
あなたがどんなに泣いていても、最後には笑っていますように。私があなたにとっての悲しい記憶になりませんように。
どうか、私と額をつけて笑い合ったことを忘れないで。私が旅立つ時、血を吐き泣いた私ではなく、あなたの手が私に触れ、照れて笑った私を思い出して。
あなたが大好きよ。
愛してくれて、ありがとう。
敬具
拝啓