TANGO SPIRIT
2004/10/4 『TANGO SPIRIT ?』 ドラマシティ
今回はお芝居ではなくてアルゼンチンタンゴのコンサートです(笑)
今日の主役のバンドネオン奏者小松亮太さんの名前を聞いたのは数年前のような気がする。
若いバンドネオン奏者が活躍しているらしい・・・、と。 昔タンゴをこよなく愛していたものとしては嬉しいニュースだったが、その後の動静は全く聞こえてこなかった。
所がドラマシティからの案内にコンサートが有ると載っていて急に心が動きチケットを取った。
曲目
第1部
1.ブエノスアイレス
2.ネグラーチャ
3.ア・ミス・ビエホス(わが両親に)
4.ピスシアーノ
5.ティエンポ・イマヒナード
6.悪い仲間
7.我が愛しのブエノスアイレス
8.ボルベール
9.エル・チョクロ
第2部
1.マランボとミロンガ
2.クイーンタンゴ
3.泣き虫
4.ウノ (人は・・・)
5.カセロン・デ・テハス(瓦屋根の家)
6.タコネアンド
7.アパシオナード
8.アディオス・ノニーノ
アンコール曲 ラ・クンパルシータ
楽器はバンドネオン=2 コントラバス=1 チェロ=1 ビオラ=1 ヴァイオリン=2 という構成
そしてピアノに特別ゲストのオスバルト・ベリンジェリを迎え、歌手マリア・グラーニャ、ダンスはミリアム&ウーゴのペアというメンバー。
舞台に現れた小松亮太さんは本当に小柄な人で・・・、その風貌は現経済閣僚の竹中平蔵さんにとても良く似ていた(^^♪ 大阪ではこれが3回目のコンサートだそうで、会場には若い女性の姿が多く見られ、終了後に有ったサイン会でも長い列が出来ていたし並んでカメラに収まる人も居た。若い人達にも受け入れらているようだ。
舞台の進行はご本人の小松さんがマイクを持ってされるのだが、今日が今回のツアーの初日だそうで段取りが上手く行かなかったり順番が違っていたり・・・(笑) だが全くピリピリした様子は無くて和やかに舞台は進んでいった。
所で皆さんはバンドネオンという楽器をご存知だろうか?アコーディオンのように蛇腹を動かして音を出す楽器だが鍵盤ではなくて両サイドにボタンが沢山ついていて両方の指を自在に使い、それはそれは鮮やかな音色を聴かせてくれる。演奏者は椅子に座り楽器を膝に載せて演奏するのだが、アルゼンチン・タンゴ特有のスタッカットの場面では膝も楽器と一緒に上下しながらリズムを刻む・・・、このザッ・ザッ・ザッという強烈なリズムがタンゴが好きな者にとっては胸に響くというか・・・、なんとも堪らない快感なのだ(笑)
私がアルゼンチン・タンゴと出会ったのは独身時代の事、駅から程近い所に『中南米音楽喫茶』と肩書きの付いた喫茶店があり、濃くて薫り高いコーヒーに生クリームをブレンドしたフレッシュをコーヒーの上に浮かべて飲むのが好きな私のお気に入りの店だった。何度か通う内に店内に流れるバンドネオンの音色にスゴク惹かれはじめ、瞬く間にその虜になってしまい何時しかタンゴが聴きたくて通いつめる羽目になっていた(笑) 当時はLPレコードの時代でA面・B面合わせて30?40曲くらい入っていただろうか? 安月給のサラリーマンだった私にとってLPレコードも、レコードプレイヤーも、とても高くて購入できるようなお金はなく、好きなタンゴを聴くには喫茶店へ行くか、ラジオの深夜番組に投書するしか方法は無かった時代だった。すぐにマスターとも顔馴染みになり日曜日には朝から晩まで喫茶店の片隅の暗い所においてあるプレイヤーの前に座って一日中レコード係りを引き受け、忙しいときにはウエイトレスもやり、店の奥で皿洗いもやりながら好きなタンゴを朝から晩まで飽きることも無く聴いていた。お店の客からリクエストも有るし、次第に仲間が増え、とうとうこの喫茶店を拠点にして『中南米音楽同好会』なるものを作ってしまったのだ。月1回くらいの割合でレコード鑑賞会を行い企画・構成・そして当日はナレーションまで務めるという本当にタンゴ漬けの日々を送っていた(笑) ラジオへの投書がご縁でその解説をしていた人から話を持ちかけられ東京からタンゴバンドを呼んで公演を行った事も有る。チケットを売り捌き、宣伝用のテープを録音して街を流して回り、公演の当日は会場でのアナウンスも務めるなど、熱い熱いタンゴとの関わりが続いた懐かしい青春の日々。この頃大阪へ本場アルゼンチンからフランシス・カナロが来るというので仲間と一緒に遠征したことが有るが、この時代に遠征することを知っていたのだから今の私が観劇遠征するのは別に不思議な事ではないかもしれない(笑) だがこの頃からタンゴは衰退の道を辿り始め、これほど嵌りに嵌ったタンゴとも結婚と同時にぷっつりと縁が切れてしまった。それから月日は経ちタンゴも廃れ、LPも今ではCDの時代になった。CDプレイヤーを購入した時すぐにタンゴの曲を探して購入したが・・・、それは私が聴いていたアルゼンチンタンゴとは全く別物の言わばダンスの為のタンゴだった。もうアルゼンチンタンゴは聴けないものと思っていたのが思いもかけず小松さんという本格的なバンドネオン奏者が現れ、本当に久し振りにバンドネオンのあの音色を生で聴くことが出来、あの指遣いを目の前で見ることが出来て幸せな1日だった。2時間はあっという間に過ぎていた。タンゴはピアノ奏者であり作曲家でもあるアストル・ピアソラの出現によって歴史が変えられたと言われている。今ではタンゴといえばピアソラと言われるくらいだが私はピアソラのタンゴがどのようなものか聴いたことは無い。プログラムの中で小松さんは脱ピアソラと思えるような発言をしているが公演後小松さんのCDを販売していたので勿論買って帰り、すぐに聴いたのだが・・・、ため息が出た?(笑) 確かにバンドネオンは奏でているのだが、まるでムードミュージックのようなタンゴ・・・、4曲目で聴くのを止めた(笑)
ファン・ダリエンソ、 オスワルド・プグリエーセ、 カルロス・ディ・サルリ、 エクトール・ヴァレラ・・・、私が愛したマエストロ達はもう居ない・・・、その欲求不満が昔を語らせたという今日の感想文でした(笑)
TANGO SPIRIT