記憶 -第2話-

私、伊良部真冬(いらぶまふゆ)は昔から友達がいない。
理由は簡単だ。
何故なら、昔からとても内気で、人とあまり話すことができないからだ。
しかも、話しかけられても緊張してしまい、「そうなんだ・・・」とか、「へぇ・・・」と、少し冷たい反応しかできなくて、なかなか会話が続かないし仲良くなれない。
それに、目つきも悪いので、睨まれているとみんなに勘違いされる。
そのせいか、高校に通い始めて約1年半。今だに友達はゼロだ。
一人でもいい、一人でもいいから友達がほしい。
心からそう思っていた。
そんなある日、私に転機が訪れた。

放課後、私はいつものように図書館で一人、本を読んでいた。
今読んでいるのは藍原瀬奈の「ピアノの旋律」だ。
デビューしてから約7年間、彼女の小説はすべてミリオンセラーを達成している。
彼女の作品は「感動の達人」という通称のあるほど感動するものばかりで、私もいつも感動させられている。
この人は、唯一の私の憧れだ。
ちなみに、今私の家の部屋にも彼女の作品が全部そろっている。
毎日読んでいるせいで、全ての小説の冒頭10ページ分は暗唱できる。
「・・・ふう、終わったぁ」
私は藍原瀬奈の小説を読み終わり、本を閉じた。そして、椅子の背もたれにもたれかかった。
すると、後ろのほうから足音が聞こえた。
私は音のする方に振り向いた。
うわ・・・キレイ・・・。
そこで私が目にしたのは、制服を着た背の高い青年だった。
整った顔立ちに切れ長の目、長い漆黒の髪、雪のように真っ白な肌。
まさに「美青年」だった。
しかし、始めてみる顔だった。
「あの・・・」
だめだ・・・緊張する・・・。
反応はなかった。
「あの・・・」
私は、もう一度質問しようと試みた。
すると・・・。
「・・・京谷・・・想弥・・・。」
私の言いたいことが分かったのか、彼は無表情で答えた。
きょうたに・・・そうや?
やはり知らない。
「・・・あんたは。」
「えっ・・・と・・・伊良部・・・真冬・・・です・・・」
声・・・聞こえたかな・・・?
「ふーん・・・ここの副館長だったっけ」
「えっ・・・あ、は・・・はいっ」
そう。私は学校の生徒であり、図書委員兼図書館副館長だ。
何故私が副館長なのかは全く分からないけど。
「・・・あ、そう」
彼はそう言い、私の隣の席に座った。
え・・・とっ隣・・・!?
私は顔が熱くなった。
なかなか人と話すことが難しい私は、隣に人がいることはとても緊張することだった。
しかも・・・相手は男子・・・・。
そんな私の思考なんてお構いなしに、彼は無表情で肩から提げていたかばんを下ろし、ノートパソコンを取り出した。
そして、パソコンを起動させ、とても早いスピードでキーボードを打ち始めた。
何を・・・しているんだろう・・・?
私は隣からそっと彼のパソコンの画面を覗き込んだ。
「・・・っ!!」
これは・・・
「・・・なに。」
私が画面を覗き込んでいることに気づいたらしく、彼は睨みながら私を見た。
「・・・なんで?・・・どうして・・・?」
何故?一体どうして?
私の頭の中には、たくさんの疑問符が浮かんでいた。

画面に映し出されていたのは、私がほぼ毎日目にしている藍原瀬奈の代表的小説のひとつ、「茜色」だった。

ただ、内容は一緒のものの少し文が違う。
「・・・はぁ・・・」
彼はため息をついた。
そして、口を開いた。
「・・・ぼくが・・・藍原瀬奈・・・」
え・・・?
この人が・・・藍原瀬奈・・・!?


これが、全ての『始まり』だった。

記憶 -第2話-

こんにちは。
柊雲です。

今回の第2話に登場する二人の名前には、本当に困りました。
ボクは人の名前を考えるのが苦手なので・・・。
しかも、「美青年」ですからね、「美青年」!
小説とか読んでいると、こういうキャラっていつも、かっこいい名前ばかりなんですよね~。
だから「どんな名前がかっこいいのか?」と、全ての脳を使いかっこいい名前を考えました。

みなさん、「京谷」と見て、なんと読んだでしょうか?
きっと「きょうや」と読んだことでしょう・・・。
そう読むと「きょうやそうや」(!?Σ(゜д゜;))
なんかどこかの芸名みたいになってしまうんですよね(笑)
でも「京谷想弥」・・・なんかかっこよくないですか!?見た目!!(←なぜか迫る)
ということで「きょうたにそうや」と読むことにした・・・というちょっとした裏話もあったりなかったり・・・。

それでは、次回のお話もご期待ください!

それでは^^

記憶 -第2話-

毎日図書館に通う少女、伊良部真冬。 感情を失った青年、京谷想弥。 これは二人の、未解決事件や謎の現象をめぐる記憶と感情と恋の始まりの物語・・・。

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更新日
登録日
2012-05-03

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