カオスな奴らと三日月荘【深緑と赤熱。赤熱編Part1】

カオスな奴らと三日月荘【深緑と赤熱。赤熱編Part1】

『注意』
今回は琅夜くんの過去編でしたが
過去編に入るまでの前置きが長くなったのでpart1として投稿します。
琅夜くんの過去はまた次回までお楽しみください。
【追記】
今回画像を描いてくれたのは琅夜くんのモデルとなったもんろーさんです!
もんろーさんのツイッターは(@Low_828)
桜月の方の琅くんbotなどもいい感じに回してる才能の無駄遣い野郎ですよ!

悪夢の目覚め。

草平の一件が終わったその日。
麗奈は部屋に入るとふと思った。
「(能力者は残り四人いるってそーくんが言ってた…)」
そんなことをベッドに寝っ転がって考えていると
気づいた時には真っ暗な空間に麗奈は立っていた。
「ここは一体どこなんだろう…」
そう囁いた麗奈に対して返事にように低い少ししわがれた声が語る。
「ここには何度も来たじゃないか。また忘れてしまったのか…私の力を持っているのにもかかわらず」
麗奈は初めて聞く声のはずなのにまるで生まれた時から聞いているように感じた。
そして麗奈は今聞いた言葉に多少驚きながら
声に問いかける
「あなたは誰なんですか?力ってどういうことなんですか?」
「私はお前の力だ。お前の母親は私のことを『トガイ』と呼んでいた」
「私の…お母さんが…?」
「ああ、そうだ。お前を産んだ時に死んでしまったお前の母親だ」
トガイは感情の籠っていない無機質な声で麗奈に言葉をかける。
「お前の母親が最期に私に『お前に宿れ』といった。そして、お前宛の言葉も私に託していった」
言葉という言葉を麗奈は不思議に思った。普通なら死んだはずの人間の言葉を伝えられるのは遺書などしかないはずだ。
しかし、トガイは『言葉を託した』と言った。トガイに伝えてくれと頼んだだけならば『預かっている』という表現をするはずだ。
託したというのは一体どういう意味なのか、麗奈は不思議に思い、尋ねる。
「託したってどういう意味ですか?」
トガイは感心したように「ほう」と言い、その後に
「『お前にお前の母親の姿を肉眼で見させることができる』ということだ」
トガイは冷静に言った、だが次の瞬間
麗奈は自分の部屋にいた。
そして、さっきのトガイの声が頭の中でテレパシーのように流れる。
「言葉で説明するよりも見たほうが早いだろう。最後に言おう。私の能力は×××を×××することだ」
一部が耳鳴りのせいでよく聞き取れなかった。
ふと気配を感じて部屋のちゃぶ台を見ると
そこには若い女性が立っていた。
「あの、どちら様でしょうか…?」
と麗奈が尋ねると女性は答える。
「初めまして。私はレイナ」
「あ、えっと初めまして、私は」
麗奈が言い終わる前にレイナは口を挟む。
「自己紹介しなくてもわかっています。大きくなりましたね。麗奈」
麗奈はこの言葉を聞いて涙を抑えられずにはいられなかった。
「お、お母さん!」
麗奈はレイナに飛びついた。
麗奈の目元には大粒の涙が、ぽろり、ぽろりと、一滴ずつ溢れていった。
「ほらほら、泣かないの」
レイナはポケットからハンカチを出し麗奈の涙を拭う。
「ありがとう…トガイ…」
「これだけでいいのか?」
低いトガイの声が聞こえた。
「うん。これ以上聞いたらもう戻れなくなってしまう気がするから」
「良かろう。おや、どうやらお前に来客のようだ」
「え?誰?」
「あの草平とかいう男だ。ほれ、相手をしてこい」
「え、あ、ちょ」
麗奈はいつの間にか自分のベッドの上にいた。
そしてドアのチャイムが鳴る。
「はいはーい・今でます」
麗奈がドアを開けると草平が立っていた。
草平は無言で「急げ」という視線を麗奈に送る。
麗奈はすぐに飛び起きてご飯を食べた。
食べている時に麗奈はふと思った。
「(あれ、なんだかとても大事な夢を見てた気がするのに思い出せない…)」
彼女は忘れて知っていた。忘れることは許されていなかったはずなのに。
これが悪夢の目覚めだあることも知らずに…

悪魔の狡猾

麗奈(レナ)が夢(ユメ)を見(ミ)ていた頃(コロ)。
琅夜(ロウヤ)は悪魔(アクマと対談(タイダン)をしていた。
琅夜もまた気づけば暗闇(クラヤミ)に立っていた。
「…またかよ。そろそろめんどくさくなってきたぞ。『琉凱(ルガイ)」
琉凱と呼(ヨ)ばれたことに反応して声が琅夜に話しかける
「本当(ホントウ)に連(ツ)れないわねぇ。でも、そういう男も嫌いじゃないわよ?」
女(オンナ)というものを丸出(マルダ)しにしたような滑(ナメ)らかな肉声(ニクセイ)の旋律(センリツ)が暗闇に響(ヒビ)く。
「今回(コンカイ)は何(ナン)の用(ヨウ)だ」
琅夜が尋(タズ)ねると、琉凱は笑っているかのような声で答える。
「いや〜やっぱり伝えちゃってよかったのかなって思ってさ〜」
琅夜はそれを聞くとムッとしたように聞き返す
「どういうことだ」
「あの女の子…麗奈ちゃんだっけ。に力(チカラ)についてのことだよ」
すると流凱は暗闇の中に姿を現した。
右耳(ミギミミ)にある銀色(ギンイロ)に光(ヒカ)る十字(ジュウジ)のピアス。
妖艶(ヨウエン)な肉体(ニクタイ)と声(コエ)。怪(アヤ)しげに赤(アカ)く光る瞳(ヒトミ)。
流凱はあぐらをかいていた琅夜に後ろから首に腕を回す。
「なんでそんなことを気にする」
琅夜は険しい表情で流凱に尋ねる。
「だって、あの子が能力者たちの王様なんだもん」
流凱は依然として言葉の後に音符マークがつくような声で答える。
琅夜は険しいが、どこか悲しい声で答える。
「自覚が必要なんだ」
琅夜は何も見えない真っ暗な闇の中を見上げて言う
「俺たちが忘れん坊だってこと」
琅夜の声には力がこもっていく
「時間を止めることなんて不可能だってこと」
流凱は琅夜に対し
「あら、これまでの出来事を忘れようと忘れられないあなたがそんなことを言うのね」
「言うさ。忘れられないからこそ忘れん坊たちの目を醒ます必要がある」
琅夜は普段からは想像のできないような力のこもった声で言う
「それが俺の力の使い道。『略奪(ルーティン)』の使い道だ」
「にしても今回は出てくるのが遅いわね。あのお婆ちゃん」
流凱はこれじゃ退屈だと言わんばかりのため息混じりな声で言う。
「どうせすぐ出てくんだろ。あいつのことだし」
「そうね。ところでローヤ」
「なんだよ」
流凱は少し息を吸ってから
「ライちゃんって言う子が来てるよ」
琅夜はビクッとし、すぐに立ち上がる。
「とっとと言えよ!さっさとこっから出せ!」
琅夜は声を荒げて言うが、流凱は笑顔のまま琅夜を見ている。
「やだよー」
「ハァ!?」
琅夜は大声で叫ぶ。
「いいから帰らせろって言ってんだろ!お前、俺の力の化身の癖に俺に従えないのか!」
「まぁまぁ落ち着いてね〜。もうすぐ終わりそ」
言い終わる前に流凱はハッとし琅夜に向かっていう。
「あ、終わった。んじゃ琅夜がんばって行ってこ〜い」
琅夜はハッとすると自分のベッドの上に寝転がっていた。

紅く光る運命の牙

琅夜(ロウヤ)は目(メ)がさめると自分(ジブン)のベッドで寝(ネ)っ転(コロ)がっていた。
部屋(ヘヤ)に集(アツ)められたパソコンのモニター。
32インチのテーブルとその周(マワ)りのゲーム機器(キキ)。
綺麗(キレイ)に掃除(ソウジ)してあるダイニングテーブル。
しわ一(ヒト)つない制服(セイフク)。
いつもどおりの光景(コウケイ)の中(ナカ)に一つだけあるはずのないものがあった。
それは寝ている琅夜の上にいた。
琅夜が目を開けると仰向(アオム)けで寝ている自分の上に来伊(ライ)が顔を覗かせていた。
「ちょ、おま、何が起きてるんだ」
琅夜は混乱(コンラン)し、慌ただしく起き上がる。
そのために顔を覗かせている来伊とおデコをぶつける。
「いった!」
二人の悲鳴が部屋に響く。

"久しぶりに…ね?"

『ドォン!!』
まるで何(ナニ)かが爆発(バクハツ)したような音(オト)が琅夜(ロウヤ)の耳を劈(ツンザ)く。
「いちいち派手に目立とうとするじゃん。そういうの嫌いじゃないよ」
と流凱(ルガイ)の陽気(ヨウキ)な声(コエ)が聞(キ)こえる。
音の中心(チュウシン)には銃(ジュウ)などで武装(ブソウ)した覆面(フクメン)の男(オトコ)たちがいる。
「(6、9、12、15人か…面倒だな)」
琅夜はゆっくりとここで注文したカフェオレを口に運ぶ。
『バン!』
と銃声が響き、琅夜が手に持っていたカップが割れる。
「動くんじゃねぇよ兄ちゃん」
銃をカップに撃ったと思われる男が琅夜に言う。
「てめぇ…」
溢れたカフェオレを勿体なさそうに眺める琅夜をみて、男は激昂する。
「あんたらがカップを壊したせいでせっかくのカフェオレが台無しだよ。ここのカフェオレ美味しいのに」
『ハァ』と溜め息を吐く琅夜に向かって男は銃を構える。
「あんたに撃てるのか?」
さっきまでのダラけた声とは打って変わって、はっきりとした凛々しい声で琅夜は言う。
男は一瞬恐怖を覚えた。銃を向けられ、自分次第で死んでしまうのに、
この男は一切恐怖を感じていない。
まるで既に死んでいるかのように。
男が恐怖したその瞬間。
周りにいた14人の男たちが次々と倒れていく。
「目は感情(カンジョウ)を現(アラワ)し、口は言葉(コトバ)を吐(ハ)き出(ダ)す…」
いつの間にか男の前にいた琅夜がゆっくりと言った。
「今あんたは怯(オビ)えている。力(チカラ)に酔(ヨ)っている人間(ニンゲン)は最(イト)も簡単(カンタン)に怯える」
話しながらゆっくり一歩一歩近づいてくる琅夜。
「それはなぜだと思う?」
男の頭を掴んで琅夜は言う。
「自分より強い奴がいるなんて思わないからだ」
琅夜が言い終わると男は気を失った。
「あそこまで脅さなくても良かったんじゃないの?」
ニコニコと琅夜の首に腕を掛けて気さくに話しかけてくる流凱に対して琅夜は無言を貫く。
「もう連れないわね。そんなにあの子から離れたくなかったの?」
「……………………」
琅夜は相変わらず無言でテクテクと店を出る。
「あなたがあの子から離れたのは誰も望まなかったことよ。だけどそれが運命であり必然的に訪れるってわかっていたでしょ?」
いつもの気さくな笑顔を崩して流凱が言うとだんまりを決め込んでいた琅夜も口を開けた
「…俺も忘れん坊だったってことさ。何回も繰り返されてきたんだから慣れてるって思ってたのにな」
琅夜の顔には寂しそうな笑顔が写っていた。
「とっととカミサマを目覚めさせてこれを終わらせなきゃな」
雨の降る昼下がりに、その声は透けて消えていった。

カオスな奴らと三日月荘【深緑と赤熱。赤熱編Part1】

どうも、ともしびです。
展開が急すぎてついてこれなくなったの為に軽いまとめを用意しました。
これで次回もきっと楽しみにしてもらえるかなと思います

1.麗奈が能力者の可能性が出てきた
2.三日月メンバーから琅夜くんが離れる(理由不明)
3.この話は何回も繰り返されている!?

はい。これですね
わかりづらい?気合でなんとかしましょう。

カオスな奴らと三日月荘【深緑と赤熱。赤熱編Part1】

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • アクション
  • 青年向け
更新日
登録日
2016-02-04

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 悪夢の目覚め。
  2. 悪魔の狡猾
  3. 紅く光る運命の牙
  4. "久しぶりに…ね?"