ふたりの絆(34)

二度目の墓参りと初キス

アカリと改めて付き合うことになった。

今度は邪魔するものは何も無い。

その代わり、アカリの心を掴めるかどうかは自分次第なのである。

早速、アカリに連絡を入れたヒカルだ。

「アカリ、近いうちにホタルのお墓参りに行かないか?」

「そうだね、ホタルに報告しなければね。」

久しぶりにお互いの想いが一致したのだ。

ヒカルは早々にホテルの手配をした。

もちろん福井県にあるホテルである。

2人にとって思い出のホテルだ。

何か11月下旬で予約が取れた。

「アカリ、予約取れたからね。」

アカリにメールを送った。

「楽しみにしているね。」

ヒカルはこの時、もう一つのことを考えていた。

それは、再びアカリと付き合うことになれば、結婚も考えておかなければならない。

男としてのけじめを着けたいからだった。

ヒカルは、再度アカリにメールをした。

「ご両親の許可は貰うように。」

後日、アカリからメールが届いた。

「両親も認めてくれたよ。」

大手を振っていくことができる。

秋も深まった11月下旬。

アカリを乗せたヒカルは、1年ぶりにホタルのお墓に向かった。

車中では、この1年間の思い出話に華を咲かせる2人だった。

ヒカルが急にアカリに言った。

「今回は何もしないという約束はしていないね。」

ヒカルは、冗談半分のつもりで言ったのだった。

アカリは急に黙りこむと、下を向いてしまった。

どうも冗談が通じなかったようだ。

女心は本当に難しいものだと感じるヒカルだ。

女心の判らない最低の男だと、世の女性から嫌われるでしょう、きっと。

「ごめん冗談だから、そんなに真剣になるなよ。」

謝ったヒカルだ。

「馬鹿。」

アカリはそういうと、やっと笑顔に戻ってくれたのだ。

福井のお寺に着いた2人は、仲良く手を繋いでホタルのお墓に向かった。

「ホタル、1年振りの再会だな。」

「約束どおりアカリを連れてきたよ。」

ヒカルは静かに手を合わせた。

アカリもすぐ横で手を合わせている。

「アカリ、何を報告したんだい。」

ヒカルは興味があったのか、聞いてみたのだ。

「ヒカルとこうして来れたのはホタルのおかげなの。ホタルは私を見捨てなかったの。身勝手なこの私を。」

アカリの目に涙がうかんでいた。

そんなアカリの肩に手をかけてヒカルは言った。

「ホタルはアカリのことが好きなんだと思うよ。今頃は天国で尻尾を振って喜んでいるよ。」

「ヒカルはホタルの気持ちがよく判るんだね。」

「それが僕とホタルの絆なんだ。そうだ、蛍がアカリにこんなお願い事を言っているよ。ヒカルのこと大事にしてあげてくださいって。」

アカリは半分笑いながらうなずいた。

ヒカルも笑い出していた。

ヒカルは心の中で思っていた。

今度来たときは、結婚の報告をするからと・・・。

ホテルへ着いた2人は夕食とお風呂を済ませ、部屋でくつろいでいた。

「これからの仕事はどうなの。」

一応聞いておきたかった。

「声優はあきらめたの、ハードルが高すぎるから。イベント中心で、それ以外のときはバイトをする予定。」

他人の仕事には口を出すつもりのないヒカルだ。

「三重県にずっと住むのかい。」

「そのつもりでいるよ。」

三重なら近いのでその気になれば会いにいける。

「また会おうね、必ず。」

「年内はイベントの仕事が多いので、来年早々ならいいよ。楽しみにしてるね。」

アカリも喜んでいるようだ。

「アカリひとつだけお願いがあるんだけど。」

ヒカルは急に真顔で話をした。

「キスしてもいいかい?」

アカリに出会ったときからずっと想ってきた。

ヒカルは素直にアカリに打ち明けたのだ。

邪魔する存在はいない筈である。

でも、これだけはアカリの想いひとつだし、決定権はアカリにある。

嫌だと言われても仕方がない。

しばらくの沈黙が続いた。

アカリが小声でヒカルに言った。

「私でもいいの?」

ヒカルはアカリを抱き寄せた。

目を瞑るアカリの柔らかい唇に、ヒカルは自分の唇を重ねた。

ヒカルにとっては想い続けたキスだった。

2人の時間がこの一瞬は止まっていた。

お互いの緊張から開放された2人は意味もなく笑った。

この日の夜は別々のベッドで眠りについた2人であった。

流れで行くなら、SEXもあるのが自然なことかもしれない。

だが、この2人にとってキスで充分だったのである。

2人の絆を確認することができたのだから。

                                           →「そろそろいいかな?(前半)」をお楽しみに。  2/14更新

                                           ホタル:とってもロマンチックな場面でしたね!
                                               そして、読者の皆様更新が遅れてしまい申し訳ありません。
                                               パソコンの不具合でご迷惑おかけいたしました。
                                               引き続き「ふたりの絆」をお楽しみください。

                                  -34-

ふたりの絆(34)

ふたりの絆(34)

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-02-04

CC BY-NC-ND
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