夜重丸 新人篇
あの依頼も無事終了し、夜一郎達は居酒屋を営業していた。
「今日は客が少ねぇな」
夜一郎は暇そうに言った。
その後も客はほとんど来ず、閉店時間になった。
「夜一郎、のれんを片付けてくれ」
神琴は洗い物をしながら言った。
「ん」
夜一郎は外に出てのれんを取ると、少しだけ歩いた。
するとすぐ近くの路地裏に人が倒れているのを見つけた。
「........!!」
夜一郎は急いで倒れている人に駆け寄った。
倒れているのは夜一郎と同い年くらいの青年だった。
ところどころに痣があり、流血もしていた。意識もない。
夜一郎は青年を抱き抱えると店に入った。
「...!!夜一郎何があったのじゃ!?」
神琴は夜一郎に駆け寄った。
「そこの路地裏に倒れてた...病院もこの時間じゃあな....神琴、処置頼めるか?」
「ああ」
夜一郎はそのまま二階の寝室へ行くと青年を布団に寝かせた。
*
目を覚ますと、見慣れない部屋が視界に映った。
青年は驚いて急いで起き上がった。
すぐそばには座ったまま寝ている一人の美女がいた。
神琴だ。
「.........え」
全く状況がわからない青年は部屋を見渡した。
その時。
「起きたか」
夜一郎が部屋に入ってきた。
青年は素早く夜一郎の方を向いた。
「えっと...とりあえず状況の説明を...」
青年は苦笑いした。
「お前がそこの路地裏で倒れてたからそいつが看病してたんだよ。後で礼言っとけよ」
夜一郎は寝ている神琴を指差した。
「そうなんですか...名前は?」
「俺は杉田夜一郎だ。で、そっちの女が天津神琴。お前は?」
「俺は坂本蘭丸です」
猫目の青年は蘭丸という名前だそうだ。
「蘭丸かー。よろしくな」
夜一郎はそう言うと神琴の方に行った。
「おーい神琴ー。起きろー」
「ん...あれ...寝ていたのじゃな...」
神琴は目をこすった。
「はいこちら坂本蘭丸くんですー」
夜一郎は蘭丸に視線を向けた。
「おお、ぬし起きたのじゃな...蘭丸か、よろしく頼む...」
寝起きで元気はないが神琴は言った。
「....で、蘭丸、お前なんであんなところに倒れてたんだ?」
「...それは......」
続く
夜重丸 新人篇