知らない時間
初投稿です。数あるジャンルの中で目を付けたのが「童話」です。童話は意外と奥が深い話が多いんです。特に有名なものを挙げると、「グリム童話」があります。
表向きには、寛容な話だが裏である改変前は、あまりにもグロテスクであったり、全体的に非人道的な物が多いのだ。
この世界ではない、どこかに二つの命がありました。
片方の命は ドウブツ、もう片方の命は ショクブツ
彼らは、何もない場所で一緒に暮らしていました。
ショクブツは何も食べません。ドウブツも何も食べません。
この世界には時間がありません。
ドウブツはショクブツをみつめています。
ドウブツはショクブツの事が好きです。
ショクブツは目を瞑っています。
彼らは呼吸をしていません。
でも彼らは生きています。
ドウブツは言いました。
「話ませんか」
どこかでヒビ割れしたような音が響いたが、彼らは気づきません。
ドウブツの言葉に対してショクブツは何も答えません。
ドウブツはまた言いました。
「話しませんか」
依然として、ショクブツは目を瞑ったまま、何も口に出そうとはしません。
ドウブツはとうとうその場所から動いてしまいました。
すると、ドウブツは二つのドウブツへと別れ、共に顔を見合し驚きました。
ドウブツはもう一人の自 分に言いました。
「あなたは誰ですか」
同時に同じ問いかけを聞きました。
ショクブツはまだ目を瞑っています。
いつの間にかドウブツは喧嘩を始めていました。
その行動にはいろんな動作を必要とします。
腕を動かし、足を動かし、口を動かす
ドウブツは知りませんでした。
時間が止まったこの世界でそのような動作をしてはいけないことを。
ショクブツは知っていました。
だけどショクブツは喋る事ができなかったのでドウブツにそれを教えることができません。
ドウブツは何も知りません。
そしてついに時間が動き出したのです。
哀れなドウブツ
哀れなショクブツ
ドウブツは嘆きました。
ショクブツは涙を流しました。
ドウブツは、私の目と口と耳と足を奪っ て分かれた命であることを
ショクブツは知っていました。
もう時間を止めることはできません。
ドウブツとショクブツは永遠に生きることができなくなりました。
時を刻み始めてから約半年の年月が経った。
ドウブツは、ショクブツのことを忘れられない自分と
そんな私に飽きれた自分とに分かれて暮らしていました。
それぞれのドウブツは永遠に生きられない事を半年の間に学びました。
彼らは、仲間を増やしたいと考え、かつて私たちが別れた時のようにして、さらに自分を分裂させようと考えました。
彼らは、ショクブツのいる場所へ集まりました。
ドウブツはショクブツに言いました。
「話ませんか」
さらにもう一度。
「話ませんか」
すると、あの時のよう に突然もう一人の自分が現れたのです。
「もっと仲間を増やしたいな」
と、ショクブツを愛おしく思っている私に嫌気がさしたドウブツは言いました。
なんて欲が深いのだろう。
「これ以上、君にショクブツへ話かける事を許さないぞ」
もう一人の私は、なんて自分勝手なのだろう。
「抜かせ、そんな事を言っといて後から自分だけを増やそうと考えているのだろう」
また彼らは喧嘩を始めました。
あの時、嘆いたのは嘘だったかのように、彼らは同じ過ちを繰り返していました。
そんな彼らを呆然と眺めているのはさっき別れたドウブツ達です。
彼らは、大変純粋な心を持ち合わせています。
なぜなら、彼らはショクブツによっていと的に生み出されたドウブツだからです。
二度 私に話かけるという行為は特に何の意味も持ちません。
喧嘩中のドウブツ達はただ知りませんでした。
彼らは、ショクブツつまり、私の悲しみや寂しさによって偶然生み出された副産物に過ぎなかったことを。
ショクブツは純粋なドウブツに心の声を述べました。
「私を食べて下さい。そうすれば、彼らは喧嘩を止めます」
「だけど、そんな事をしても喧嘩は続くかもしれません」
欲深いドウブツから生み出された彼は言いました。
「なら、その時のために貴方達どちらかに私の種を預けます」
「それは私が預かります」
自分勝手なドウブツから生み出された彼はそう言いました。
「それなら私も賛成です」
喧嘩をしている彼らにはこの声は決して聞こえません。
「それと一つ、私 を食べる前に貴方達に話して置きたいことがあります」
「何ですか?」
純粋な彼らは同時に同じ質問を尋ねました。
「これから渡すこの種について。この種は私ではありません。この種から生まれるショクブツは今の私と決定的な違いがあります。
それは、相手の事を増やしたり、心の声を話す事はできません。新しい私は何もできなくただ生きていきます。それだけです」
ショクブツは語り終わると、覚悟を決めたかのようにこれ以上何も話しませんでした。
「この種から生まれるのが貴方でなくても、貴方という素晴らしいショクブツは私たちの中で永遠に生き続けます。時が止まっていたあの時のように」
その言葉に感情はなかった。
時が止まった時間は、ショクブツにとって孤独でし かなかったことを純粋な彼らは、知りませんでした。
そして純粋なドウブツは静かにショクブツを食べました。
哀れなドウブツ
哀れなショクブツ
この後、彼らがどのような結末を終えたのか、またどのような人生を送ったのか
それは彼らしか知らないのです。
知らない時間
最後まで、読み切って頂きありがとうございます。
この話は、ほとんど思いつきで描いた物語です。作者としては、この作品から深い何かを感じとってもらえると幸いです。