列車が走る。

ガタンゴトン、ガタンゴトン...

人もまばらな列車の中、窓の外は夜。通り過ぎる家々の明かり。

目を瞑る。

ガタンゴトン...

列車が空を飛ぶ。

トンネルを抜けると線路はない。山の山頂近くに空いた穴から列車が出てくる。

星空を走る。雲を抜けて...

停車するのは、雲の上駅、星の川駅、虹の駅...

虹の駅を過ぎると、誰も話さなくなる。

思い出駅で降りた者は、皆思い出の影を追う。

思い出の中で、たとえ影であっても幸福になれるものは、戻ることはない。

影でしかないことに気づいた者は、再び列車に乗り込む。

最後に辿り着くのは、虚無の駅。

錆びれた駅のホームだけが、空中に浮かんでいる。

ひとり、ふたりと列車から降りてゆく。そして、振り返ることなく灰色の雲の中へ吸い込まれるように消えてゆく。

乗り込む者はいない。

降りた者が戻ることもない。

乗客がひとりもいなくなった列車は、しばらくすると元来た道へと引き返し走り去ってゆく。

当たり前のように繰り返される日常に違和感を感じる方へ

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-05-02

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