ミス・サイゴン

9/14  『ミス・サイゴン』 帝劇 マチネ

本日のキャスト

エンジニア=市村正親 (本日別所哲也、怪我の為休演)

クリス=石井一孝

ジョン=岡幸二郎

トゥイ=泉見洋平

キム=新妻聖子

エレン=ANZA

これはベトナム戦争の物語である。ベトナム戦争とは北ベトナムを支援したソ連と南ベトナムに付いたアメリカとの1960年から実に15年間も続いたイデオロギーの戦いだった。

だが最後にはアメリカはベトコンと呼ばれた北ベトナムのゲリラ戦についに勝つ事が出来ず撤退したが、アメリカの多くの兵士達はこの戦争がトラウマとなり、ベトナムでは全土が荒れ果てゲリラを炙り出す為に撒かれた枯葉剤で今もその後遺症に苦しむ人が大勢いる。しかしこの作品はブロードウエイミュージカル・・・、アメリカは夢の国・・・それをエンジニアが歌うアメリカンドリームが象徴している。

舞台はヘリコプターの音が響く中で荒れ果てたベトナムの風景が薄い幕に描かれその向こう側に菅笠を被った人達が行き来しているのが見える所から始まった。戦争も終りに近づいたサイゴンの町のあるキャバレーの経営者エンジニアはアメリカ行きが悲願でそのお金を貯める為にアメリカ兵にベトナムの女性を斡旋しているのだがそこへジョンとクリスが現れる。クリスは一度戻ったアメリカで高まっている反戦ムードの中で白い目で見られた事に傷つき再びサイゴンに戻ってきたのだけど鬱々として気が晴れない日を送っている。そんなクリスを慰めようとジョンが店に連れてきて女性を紹介して欲しいとエンジニアに頼む。今日が始めてだよ! ここぞとばかりキムを売り込むエンジニア・・・、けばけばしい服を着た女性達ばかりの中にあって只一人キムは白い服を着ていて清純さを際立たせている。新妻キムがとても初々しい!女性達は皆チャイナ服のようなドレスだがこれがベトナムの民族衣装なのだろうか?だがその白いチャイナ服の下は下着だけ・・・、時に肌が露になり如何にも身体を売る商売女と見えるのが痛々しいがそんなキムの姿がクリスの目に留まる。あの子は誰?・・・。エンジニアはチャッカリと高いお金でキムを売りつけ、クリスはキムの個室へ案内され2人は抱き合って一夜を過ごし、キムに引かれ始めたクリスは2人で暮らそうと言い出す。ジョンに休暇の延長を、と電話をした時すでにサイゴンは陥落寸前だった。だが2人はベトナム式の結婚式を挙げる。

結婚式の最中にかつての婚約者だったトゥイが現れアメリカ兵といるキムに怒りを爆発させクリスにピストルを向けるがキムは身体を張ってクリスを庇う。キムとクリスは幸せそうに♪世界が終わる夜のように♪を歌い上げる。2人にハーモニーが素晴らしい!新妻聖子さんの歌声は澄んでとても綺麗な声で清純さを失わないキムにピッタリだという気がする。

だが舞台はここで3年後のサイゴン、(今はホーチミンと名前を変えている)へと変り舞台の中央からものすごくでかいホーチミン像がゆっくりと現れる(笑)

エンジニアがボロボロの服を着て現れ今の生活状態が伺えるがまだアメリカ行きの夢は捨ててはいない。そんなエンジニアの前に今は解放軍の士官となっているトゥイが現れキムを探すように命じる。

場面はキムの部屋に変るのだがその2階部分に今はアメリカに帰り結婚しているクリスとエレンがベットに寝ていてクリスはうなされている・・・。この当たり話が錯綜してチョッと判りにくい。

アメリカの妻エレンとベトナムのキムが声揃えて♪愛は変りはしな?い?♪と歌い上げるのを見るのはとても複雑な気持ちになる。

エンジニアの案内でキムの家を訪れたトゥイはそこでキムがクリスとの子タムを育てている事を知り激怒してタムを殺そうとピストルを向けるが逆にクリスが置いて行った拳銃で撃たれて死んでしまう。

キムはエンジニアに助けを求める、トゥイを撃った!・・・と。エンジニアは驚くが咄嗟にこれがパスポートになる!と思いつきタムのご機嫌を取る。おじちゃんにキスを・・・。このタム君がスゴク可愛いの!

3歳くらいかなぁと思ったら4歳だそうだ、でもしっかり芝居をしているの。この時もエンジニアにキスをした後サッと手でその口を拭く(笑)今日のタムは内田裕希くん・・・、帰りにキャストを確認してしまった(笑)しっかりと手を繋いだ3人が舞台中央の奥へ消えていく。

2幕は幕が上がるとほの暗い舞台の中央にスクリーンがあり後ろにコーラス隊がいてこの「ミス・サイゴン」を象徴するナンバー「ブイ・ドイ」を歌い始める。ジョンがベトナムの混血児を救う運動を始めているのだ。ジョンがブイドイの問題について演説している、といった風景だ。演台がありその前でジョンの岡さんが素晴らしい歌声を聞かせスクリーンにはその子供達の映像が次々と映し出される。しかしこの歌の歌詞がスゴイ!♪置き去りにしてきた子供の顔?名はブイ・ドイ?地獄で生まれたゴミクズ・・・♪・・・父親を与える義務がある・・・♪ 朗々とした岡さん声が響く。

ジョンの所へキムがクリスの子を育てていると情報が入りそれをクリスに伝えるがクリスは妻には話せないと動揺する。

場所はバンコクへ変りエンジニアは今は雇われ客引きをしている。この時の市村さんは何時ものように明るいのだけれど何処か卑屈になっているエンジニアをとても上手く表現している。

何処がどう、と言葉には出来ないけど確実に伝わって来るのがスゴイ!そんなエンジニアの前にキムの事を尋ねてジョンが現れる。知らせたのは勿論エンジニアだ。アメリカが近づいてくる!

ジョンはキムにクリスの現状を伝えようとするがキムはクリスに逢える喜びで一杯、ジョンの言う事は耳に入らない。エンジニアはそんなキムにクリスを尋ねろと言う、子供がいれば男は逃げる、金づるは放せない!・・・エンジニアの打算。お祈りをしようとするキムの前にトゥイの亡霊が現れ俺を殺した罪は逃れられない、俺は死んではいないと・・・。そんなキムに3年前のサイゴン陥落の悪夢がよみがえる。

サイゴンは落ちた!ドサクサの中でのクリスとの別れ・・・。脱出する兵士を乗せるヘリコプターが爆音を響かせて到着する。おぉ?これが話題のヘリコプターなのか・・・!舞台中央の天井から2つのライトを照らしながらゆらりゆらりと傾きながら小さな建物の上に降りたヘリコプターに抵抗しながらジョンに押し込められるクリス・・・、この舞台のクライマックスだ!!

舞台はキムがエレンの部屋を訪ねる場面へと変わるりエレンはクリスと結婚している事を告げる。キムはタムをブイドイには出来ないからアメリカへ連れて行って欲しいと言うがクリスとの子供が欲しいと拒絶するエレン、しかし実際にこんな場面に遭遇した時すぐにタムを連れて行って、言えるものだろうか・・・?ベトナムの女性達が置かれている状況はこれが当たり前になっているから咄嗟に頭に浮かぶのだとしたらとても悲しい事だね。クリスは言う・・・、ベトナムの泥沼で見た一瞬の安らぎ・・・、男のエゴイズム。ジョンが問い詰める・・・子供を引き取るのか? 見捨てるのか?

キムはエンジニアに告げる、荷造りをして・・・、あの人が来る・・・。おぉ?アメリカへ行ける!!有頂天になってエンジニアは歌う・・・♪アメリカンドリーム♪・・・ここからは市村さんの独壇場!!歌いながらの踊りが続くが、兎に角ステップが軽いんだ!別所さんはこのシーンで足を骨折されたと聞いたが市村さんは何の苦も無く踊っているように見えた。キャでラックが出てきたり自由の女神が車にのっていたり・・・、これがエンジニアが夢見たアメリカなのだが・・・消えるな俺の夢、の声が小さくなって涙声になる。

キムはタムの着替えをして抱きしめる。そのタムをエンジニアが手を引いてクリスのいる舞台の上手に移動するとキムは自分部屋へ入りカーテンを閉めるとパーーンと銃声の音・・・、クリスが駆け寄って抱き上げる。・・・・「キ??ムッ」・・・・クリスの絶叫で終わる。

カーテンコールは盛大だったが劇中でのソロでは拍手がとても少なかった。テーマが重いものだから仕方が無いのかもしれないが淋しかったな。今日の主要キャストは全員歌が上手い。特に新妻聖子さんの歌に心が引かれた。ミュージカルを観る時は何時も予習をして音楽だけは頭へ入れて臨むのだが私が聴いたキムは本田美奈子さんだった。とてもドラマチックな歌い方だったが今日の新妻さんは

とても素直で綺麗に澄んだ声で歌うのが返ってキムの悲しみが心に染み入るようだった。市村さんは言わずもがな・・・(笑) 只余りにも自由自在の演技が馴れ過ぎているという気がしないでも無い。

ベトナム戦争はアメリカの汚点とまで言われた戦争だがイラク戦争がベトナムの二の舞になるかもしれないという懸念が起きている。戦争による被害者は何時も弱者だ。世界の何処でも全く戦争が無い!という世の中が来る日があるのだろうか?

ミス・サイゴン

ミス・サイゴン

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-01-16

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