輪廻の先
今日は久しぶりに5人で集まる。高校時代の友人と会うのはおおよそ5年ぶりくらいだろうか。私はその主催者ですでにバーベキュー場の予約はしてある。自然豊かな公園だとか。何故バーベキューなのかは自分でも分からないがそうあるべきだと、そうでなくてはならないと思った。当日、5年ぶりに会った皆は全く変わっておらず昔と同じであった。ただほんの僅かな違和感を除いては。どういう訳かバーベキューセットが6セットと1セット多かったが誰かが間違って持って来たのだろう。さて、バーベキューも終盤に差し掛かる頃、1人が向こうの草むらを指差し言った、「さっきから気になってたんだけど、あれ、なんだろう」そいつの指差す先にはコンクリートのようなものが少しだけ草の間から覗かせていた。皆で近づいてみるとどうやら地下道への入り口のようだ。入り口はボロボロのフェンスで守られており、素手でも引きちぎれそうなものだった。いつかに見たような気がするこの景色、何故か次に起きることを私は予測できた。おそらく‥。中から瀕死の男が階段を這いつくばって現れた。予測通りだ。しかも、私はその男をどこかで見たことがあるような気がする。その男は僅かに口を動かしながらフェンスに寄りかかるような形で倒れた。皆は慌てて救急車を呼び十数分後その男は運ばれていったがおそらく助からないだろう。なぜか救急隊員は全く地下道のことについては触れなかった。翌日、私たちはもう一度集まりその地下道に入ることにした。懐中電灯を片手に階段を降りてゆく。端には腐った水たまりがあり、ゴキブリとゲジが追いかけっこをしている。私たちは何も言わず先に進むことにした。その地下道はどこまで行っても暗闇でほとんど先が見えない。まるで何かに導かれるように足を進めてゆく。あれからどれだけ歩いただろうか、10分しか経って無いようにも思えるし、数日歩いたような気もする。気づけば皆いなくなっている。途中で引き返したのか、死んだのか。飢えや喉の渇きは全く感じず、ただ1歩1歩足を動かし続ける、機械のように。僅かに光が見えた。外だ。光が近づいてくると急激にこれまでの疲労が体に重くのしかかる。階段の1段目に足をかける、もう1段と足を乗せる。先にはフェンスが見える、ボロボロだ、最後の1段に足を乗せた瞬間、私は力尽きその場に倒れこんだ。薄れゆく意識の中で聞いたのは最近か、昔か、にいなくなった友人の声だった。そこに私の声はない。私は声のない声で呟いた、「通報してはダメだ、早くこのことを忘れて帰らないと‥」
今思い出した。高校時代の友人は5人いたのだ。あの時、地下道から出てきたのは私の1番の親友だったではないか。
輪廻の先
そしてみんないなくなる