妖怪の山の一日 未完
プロローグ
雲一つない秋晴れの空。
不意に吹いた秋風が神社の境内に集められた落ち葉を攫い、掃き掃除をしている巫女の足元で木枯らしを起こす。
長々と巻き起こったそれは、巫女の今までの掃き掃除を徒労だとあざ笑うかのように落ち葉を吐き散らした。
「なんでこうなんのよ……」
その様子を眺めながらとても長い嘆息を洩らす巫女。
普段は滅多にやらない掃除をやったせいか、軽く動かすだけでぽきぽきと音を出す肩を揉みほぐしながら縁側に腰掛けて淹れていた緑茶を啜る。
「……ふぅ。やっぱりこうしてるのが一番ね。退屈ではあるけど」
これはそんなぐうたら巫女の勇ましい妖怪退治奇譚……ではなく。
「はぁ~、しっかし後ろの山はどうにかならないものかしら。毎年秋から冬にかけての枯葉が大量に降ってくるわ、面倒事を起こすわ、そのくせ碌に参拝にも来ないわ……」
ここ博麗神社の裏手にある大きな山、人呼んで“妖怪の山”と呼ばれる場所と、そこに住む住人(住妖?)達の長い一日を綴った物語である。
妖怪の山の一日 未完