稲荷の夜

性的描写有につき、18歳未満閲覧禁止です。
Twitter企画【異能街】より、稲荷兄妹のIf小説です。

稲荷の夜


「久し振りに戻ってきたね」
縫芽はそう言いながら、地下へと続く梯子を降りていく。
ここは、稲荷兄妹の住処の一つ。その中でも、一番上等と言える場所だった。

後に続いた安悠は、唯一の出入り口である扉を閉じると、数週間ぶりの住処を見渡し、満足そうに頷いた。
「うん。誰にも入られた跡は無いね」

縫芽は、慣れた手つきでランプに火を付ける。
ぼうっとした薄明かりが、地下室を照らした。
一通りの生活用品が揃っていると言うだけでも、二人には貴重な場所だった。
特に、C地区の中でもかなり安全な部類に入るここは、二人が心から安らげる場所でもある。
「また二人でここに戻ってこられて、良かった」
縫芽はここに一つしかないベッドに腰掛けた。安悠もそれに倣い、隣に座る。
「そうだね。本当に……色々あったから」
沈黙が下りる。

すぐ隣に座っているのに、二人の視線が交わることはない。
突然、縫芽が自分の手を安悠の手に重ねた。そして、温もりを確かめるように、ほっそりとした指が兄の指に絡む。

「……どうしたの?」
安悠が、戸惑いながらも、初めて妹の方を向いた。ランプの光が、二人を淡い橙に染める。縫芽が顔を赤らめているようにも見えたが、橙の光で、はっきりとは分からなかった。
縫芽は、おもむろに安悠の方を向き、口を開いた。
「兄貴……、私……ね。 あの時から、兄貴といると……胸が苦しくて」

安悠が疑問の声を上げる前に、縫芽は顔を近付けて、安悠に口づけをした。そのまま肩に手を当て、押し倒す。安悠は慌てて妹を引き離した。ほんの数センチの距離で、互いの吐息を感じながら、言葉を交わす。
「縫芽……!」
「好きになっちゃったの」
「僕らは兄妹だ……」
「好きなの……兄貴……!」
もう一度、縫芽が安悠に唇を重ねた。
また抵抗しかかったが、安悠はやがて力を抜き、そっと縫芽を抱きしめた。

数秒、まるで時間が止まったかのように、二人は唇を重ねていた。
ランプの火だけが、ゆらゆらと揺れる。
地下室の壁で、二つの背徳の影が一つに溶ける。

やっと二人は唇を離すと、上気した顔で互いを見つめた。
言葉を発するのも惜しく思われるほどに、その静寂は濃密で、心地良い物だった。

「……本気?」
静寂を破るのを恐ろしく思いつつも、安悠は尋ねた。体が熱い。
安悠の問いに、縫芽はコクリと頷いた。
それを見ると、安悠は体勢を逆にしようと、縫芽の体を持ったまま、ぐるりと体を回転させた。縫芽が短い声を上げる。その声が、いやに艶っぽく感じられて、安悠の体はますます熱くなった。
安悠が縫芽に覆い被さるような姿勢になると、安悠はじっと縫芽を見つめた。
ややあって、縫芽が先に顔を背けた。その耳が、ランプの灯りではごまかしきれないほどに赤くなっている。
短い髪が、しどけなくベッドに広がり、まだ純潔な娘の首筋が露わになった。
安悠は、妹と女との境目にいる彼女に、複雑な感情を覚えた。
唇の柔らかい感覚はまだ残っている。だが、理性がそれを貪ろうとする自分を制していた。

実の妹を己の手で穢す背徳は、快楽は、どれほどのものだろう。大きなうねりを伴って、ぎらついた感情が押し寄せた。理性がその感情に飲まれて萎んでいく。
縫芽の頬に手を当て、優しくこちらを向かせた。
「どうなっても……知らないからね」

「んっ……!」
先ほどよりも激しい口づけに、縫芽は体を固くした。舌が慣れない様子で相手を探り、互いの唾液を舐めながら絡み合う。
安悠は、空いた手で、縫芽が着るパーカーのジッパーを下げた。パーカーの前を開き、はだけさせた所で、縫芽が安悠の腕を掴んだ。

「服……全部、脱がさないで……」
縫芽は力無く言った。安悠はすぐに、腕の火傷を気にしているのだと気付いた。
「分かったよ」
安悠はパーカーの下の服から一旦手を離したが、一瞬後に服を胸元まで一気に捲り上げた。下着を着けていない小さな胸が露わになる。
「ちょっ……」
「ここまでなら良いでしょ?」
抗議の声に、安悠は囁いて答えた。
縫芽は、恥ずかしそうに胸元を隠した。
「でも、私、小さいし……」
「可愛いよ、大丈夫」
安悠が促すと、縫芽はしぶしぶ腕をどけた。
「兄貴、恥ずかしい……」
「今さら?」
いたずらっぽく微笑む。
「縫芽が先に僕を押し倒したのに」

また縫芽が胸元を隠しそうになったので、両方の手首を片手で掴んで枕元に抑えつけた。力だけなら縫芽の方が強いはずなのに、縫芽はいとも容易く安悠の力に屈した。
縫芽は、胸元までを曝した上に、腕を上げた状態で組み伏せられている。
安悠は、自分の落ち着いた態度と裏腹に、体は異様に興奮しているのが分かった。ちょっとやそっとでは収まりそうにない。
縫芽の引き締まった体を、脇腹から腰へ向かって、指先で撫でていった。時々、縫芽が腰を浮かせて悶える。
指の動きに合わせて、首筋から、ゆっくりと、焦らしながら、耳に向かって舌を這わせていった。
「あっ……」
くすぐったかったのだろうか、縫芽は少し抵抗するような素振りを見せた。
すかさず、縫芽の耳に軽く歯を立てた。すると、小さく声をあげてから、大人しくなる。

「良い子だね」
耳元で小さな声で囁く。言葉を発する度に息がかかり、縫芽は体を震わせた。
今度は縫芽の耳朶を口に咥えた。耳の溝に沿って舌を這わせ、耳の穴にまで舌を入れた。縫芽は驚いて顔を背けようとするが、安悠は、撫でていた方の手を離し、今度は頭を固定する。
「んっ、ふぅ、ん……」
縫芽は、逃れられないまま、安悠に耳を舐られ続けた。
くすぐったさと同時に、快感が背中を駆け上る。癖になりそうだった。

「……下も脱がすよ」
安悠はまた耳元で囁くと、縫芽の答えも待たずに、腰元に移動した。
「あ……兄貴も脱いでよ……」
縫芽は、ささやかな抵抗のつもりで言った。

「ふふ。ごめん、そうだったね」
安悠は、そんな縫芽の様子を可笑しく感じながら、着ている服のボタンを外し始めた。
「……よいしょ、っと。……どうする?下も脱ごうか?」
安悠の言葉に、縫芽は反射的に首を横に振った。それから、あ、と口を開ける。
「いや、でもやっぱり……」
「脱いでほしい?」
「……後ででいい」
「後って?」
「だ、だから……」
縫芽は恥ずかしそうに目線を逸らした。
安悠は、その愛おしさに思わず笑みをこぼす。
「……いじわる」
縫芽が拗ねた声で呟いた。
「ごめんごめん」
そう言って軽くキスをしてから、もう一度ショートパンツのベルトに手をかける。
カチャカチャと、金具を外す音が響く。
縫芽は、ぎゅっと目を閉じ、恥ずかしさに耐えていた。
ショートパンツを脱がすと、肌の色も見えないほどの真っ黒なタイツに指を這わせた。触れた部分がピクピクと反応するのを見て、安悠は笑った。
「タイツ越しでも感触伝わるんだ」
「……当たり前でしょ……んっ」
「ちょっと勿体ないけど、これも脱がすよ」
「もったいないってどういう意味」
「何でもない」

縫芽の腰に手をやり、タイツの端を摘まんで、ゆっくりと下ろした。
綺麗な色をした肌が露わになる。
ついに、下着を残し、縫芽は腕を除いて体のほとんどをあられもなく晒し出した。

その滑らかな肢体に、安悠は息をのんだ。これまで何とも思っていなかった妹の体が、これほどまでに魅力的だったとは。
兄妹として過ごした日々を遠いものに感じながら、そのしなやかな脚に触れた。
撫で、キスをし、舌を這わせる。その度に、縫芽は小さな声をあげる。
脚への愛撫をしばらく続けた後、安悠は縫芽の上半身へと狙いを変えた。

「そう言えば、ここを触るのを忘れてた」
覆う物が無くなった胸を、両手で愛撫した。すっかり固くなった乳頭をこする度に、縫芽の口から甘い吐息が漏れた。
「ばか……んむっ!」
隙間の開いた口に顔を近づけて、もう一度舌を差し込んだ。
縫芽は、体をのけぞらせながら、舌での愛撫に応じる。
「はぁっ……はぁっ……!」
荒い息を上げながら見つめ合う。
互いの肌が直接触れ合い、艶やかに温もりを交わす。

縫芽は、恥ずかしさを必死に抑えているといった様子で、シーツを掴み、体を隠しそうになるのを我慢していた。その様子がまたいじらしかった。

「兄貴……」
縫芽は、目を潤ませながら、懇願するような目を向けた。安悠は、それに応じる様子は見せず、縫芽の上体を起こし、後ろに座った。縫芽は兄が何をするつもりなのか理解しないまま、安悠に体を預けた。
すると、安悠は縫芽の下腹部に手を伸ばし、下着の中に手を入れた。
「ひぃっ……ん、あぁっ!」
今までの愛撫とは違う刺激に、縫芽は思わず大きな声をあげた。
思わず脚を閉じようとするが、安悠は無理矢理手を入れた。

秘部の周りをこすりあげ、縫芽が短い喘ぎ声を上げるのを楽しんでいる。

「あっ……あっん」
「縫芽、ちゃんと脚開いて」
安悠が囁くと、縫芽は困ったような声を上げた。
「で、でも……」
「ちゃんとほぐしとかないと……痛いかもよ?」

縫芽は体を固くした。それから、ゆっくりと脚を開く。
「やっぱり、最後までしたいんだ」
「い、いじわる言わないでよ」
縫芽は俯いて真っ赤になった。

安悠は、もう一度下着の中に手を入れると、既に愛液で濡れ始めている秘部を撫でるようにまさぐった。動かす度に、手が愛液にまみれていく。

「ああっ!んんっ……!あっ……はぁ!」

頭が痺れそうなほどの刺激に、縫芽はたまらず声を上げた。

安悠は、ずれおちてしまった縫芽の服をもう一度捲り上げると、それを縫芽に咥えさせた。
「そのままね」

空いた方の手で胸をいじると、縫芽の声は、くぐもっているものの、更に高くなった。

「んむっ!んーっ!んんん!」

大声を上げたくなるような刺激にも、縫芽は歯を食いしばってなんとか耐えた。

「ふーっ、ふーっ……。んんっ!んふんん!!」

一瞬手を休めては、また触る。不規則なリズムに、縫芽は翻弄されながらも、心地よい快楽を感じていた。

安悠は縫芽のうなじを舐めながら、手を更に動かし、ついに膣口に指を入れた。
下着が湿るほどに濡れていたそこは、容易く安悠の指を飲み込んだ。

「ああぁ!あぁん!あっ!ん……!!はぁっ……あぁ!」

声を抑えることが出来ず、咥えていた裾を離してしまった。
それにも構わず、安悠の指は激しく出入りし、水気のある音を響かせていた。

「あっああああ!!!あっっ!!だめ!!イッ……いっちゃう……!!」

腰を浮かせて、縫芽は必死にやめてと懇願する。ついにそんな声を上げる余裕も無くなった頃になって、ようやく安悠は手を止めた。
縫芽の体をそっと横たえさせる。
絶頂の寸前だった縫芽は、わずかに体を痙攣させながら、荒い呼吸をした。

「やめてって……言った、のに……ばか……。い……いくなら、一緒に……」
「……ごめんね。縫芽があんまり可愛いから」
「かっ……」

縫芽は恥ずかしそうに顔を背けた。

「……そういえば、まだ兄貴に……」
「何?」
「……す、好きって言われてない」
「可愛いじゃだめ?」
「……好きじゃないと、だめ」

「……好きだよ、縫芽。大好き」
「えへへ……私も……」
二人はまた唇を重ね合わせた。それまでで、一番長く、濃密に。
ようやく二人は離れると、安悠が先に口を開いた。

「縫芽、もう……いいよね?」
「……ん」

安悠の問いに、縫芽はコクリと頷いた。
それを見ると、安悠はするりと縫芽の下着を脱がした。
カチャカチャと安悠が自分のベルトを外しているのを、縫芽は横目に見ていた。
脱ぎ終わると、安悠は縫芽の腰元に移動した。

「脚、もっと開いて」
「……」

縫芽は恥ずかしがりつつも、安悠の言うとおりに脚を開いた。

「それじゃ……入れるよ」

安悠が自分のものを秘部にあてがうと、つぷ、と先端が埋まった。
そのまま、少しずつ腰を押し出して、半分ほどを挿入した。

「ーーっ!」

やはり痛かったのか、縫芽は歯を食いしばるような表情を見せた。
破瓜による微量の出血が、シーツに染みを付ける。

「……ゆっくり動くから」

少しずつ、少しずつ。縫芽の奥深くまで入っていく。

「……全部入ったよ」
「……よく分かんない」
「痛い?」
「ちょっとだけ」

それを聞くと、今度は少しずつ腰を引いた。肉壁がまとわりつくようにうねり、刺激を与えてくる。
縫芽が甘い息を漏らした。馴染んできたのだろうか。
縫芽の様子を見ながら、安悠はゆっくりとピストン運動を始めた。
苦しげだった縫芽の呼吸は、すぐに嬌声の混じるものに変わっていった。

「あっ……あっ……んっ……!」

動きがどんどんと速くなり、体と体がぶつかるたびに艶めかしい音を立て始めた。

「あっ!!あああっ!!んあっ!あに、き……!ひぃん!!」
「縫芽……縫芽……!」

快感に包まれながら、愛しい相手を呼び合う。
腰のぶつかる音が速くなるにつれ、その声も高く、大きくなっていく。

「あにき!あにきぃ……!!」
縫芽は安悠の肩に手を掛けた。

「ぎゅって……ぎゅってしてぇ……!」

安悠は縫芽の背中に手を入れ、ひしと抱き締めた。腰の動きが鈍くなったが、それでも縫芽は高い声を上げる。

「あにきぃ……あにきぃ……!!あっあああああ!!!!」
「縫芽……!!」

縫芽の叫び声と共に膣内がぎゅっと締まり、安悠のものを搾り上げようとした。安悠は、ギリギリまで耐えてから、自分のものを抜いて、縫芽の腹の上に白い液体を吐き出した。

「はぁっ……、はぁっ………」

互いに絶頂を迎え、崩れ落ちた。




──
───
「…………」
「ねぇ、兄貴」
「実の妹に手を出してしまった……」
「兄貴ったら!」
「ご、ごめんよ縫芽……」
「何で謝るの! 好きって言ってくれたじゃん!」
「そ、そりゃあ好きだけど……」
「…………」
「何で照れるの」
「いやだって、面と向かって言われたら……」
「…………」
「…………」
「……から」
「えっ?」
「私も! 兄貴のこと大好きだから!」
「縫芽……」
「その、だから……もう一回だけ……キス……したい……」
「……ぷっ」
「なっ! なんで笑……んむっ!
 ……ぷはっ。
 ……いきなりはズルい」
「じゃあ、もっとじっくりする?」
「……キスだけ……なら」


Fin.

稲荷の夜

稲荷の夜

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • 成人向け
  • 強い性的表現
更新日
登録日
2016-01-23

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