すれ違い疎通


彼はいつも教室のドアの、小さな窓を見つめている。


そんな彼を見て、私も目を向けてみる。


けれど特別面白そうなものは見当たらない。


それは私の席から見えないだけなのかもしれない。

もしかしたら、彼にしか分からない何かがあるのかもしれない。


彼は今、何を見て、何を考え、何を思っているんだろう。


今、先生が黒板に書いている数式よりも難問な課題だ。


彼女はいつも、教室の窓に顔を向けている。


そんな彼女の目線を辿って、自分も窓の外へと目を向ける。


しかし、窓から見える景色はいつも大して変わりはない。


彼女が見ているものは、俺では気づくことが出来ないものなんだろうか。


彼女は今、何を見て、何を考え、何を思っているんだろう。



数学教師のほんの少しだけ浮いたように見える髪の毛が、ヅラか地毛を見分けるのと同じくらい難しい問題だ。

すれ違い疎通

すれ違い疎通

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-01-23

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted