すれ違い疎通
表
彼はいつも教室のドアの、小さな窓を見つめている。
そんな彼を見て、私も目を向けてみる。
けれど特別面白そうなものは見当たらない。
それは私の席から見えないだけなのかもしれない。
もしかしたら、彼にしか分からない何かがあるのかもしれない。
彼は今、何を見て、何を考え、何を思っているんだろう。
今、先生が黒板に書いている数式よりも難問な課題だ。
裏
彼女はいつも、教室の窓に顔を向けている。
そんな彼女の目線を辿って、自分も窓の外へと目を向ける。
しかし、窓から見える景色はいつも大して変わりはない。
彼女が見ているものは、俺では気づくことが出来ないものなんだろうか。
彼女は今、何を見て、何を考え、何を思っているんだろう。
数学教師のほんの少しだけ浮いたように見える髪の毛が、ヅラか地毛を見分けるのと同じくらい難しい問題だ。
すれ違い疎通