鋳掛屋

応急救護講習に履いていったのは
穴開き靴下だから
片足に片足を重ね続けていた
助けられたのは
円形脱毛症の足裏

  川口市は
  ヤクザ、風俗、○○○で有名だから
  日本で唯一のベーゴマ工場がある
  鋳物工場で今から街おこし
  なんて時代遅れだから
  穴開き靴下の名産地で街おこししよう

寄ってらっしゃい見てらっしゃい
こちらはお悩み相談室ですよ
きみが書いた小説には
やたらと穴が登場しているからね
どうせならきみ自身の穴を
見せてごらんよ
ほら
脱いでごらんよ
ぼくはどれだけ脱いだって
筋トレ中の体しか残ってないから

  ぼくはね
  どうしても聞き役に徹することが多い
  それこそ
  ぼくはフラスコのような容器だから
  入れるだけ入れて
  こぼれないようにするから
  誰かが火をかけない限りね

ふつふつと
沸き立つ泡
 浮き足立つ
シャボン
  飛んでいく 唾
 飲み込む固唾
うくうく
   どうせ
 いや
聞くよ
    でも
結論だけは
先に聞かせてね
後の話は
左  筒  右
に流すだけだから

鋳掛屋

初出:即興ゴルコンダ

鋳掛屋

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-01-22

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