内省

「内省」


ずっと眼球の奥に蛆がはう音が聞こえる

しっ!静かにしたまえ!

君たちが騒げば、どこをはっているのか見失ってしまう


騒々しいまろうど(客人)


今こいつは、俺の体という体を隈無く吟味しようとしているのだ


君たちなのか内なるものなのか俺には関係ない


水面に投石された波紋がひろがるように


とかく、心臓が高鳴る、


霜解け路面の草木は

けぶれるように萌えいでて

泥臭い血が、蜂蜜のように鈍くめぐってゆく


ああ、心に弦が触れるよう



あらゆる感覚が研ぎ澄まされてゆく


あらゆる事象、この大自然の生きとし生きるものすべてが私に語りかける


震えているのだ



この寂寞たる海は私にかくかたる



万物は多弁、私は傾聴するもの


きっと奴め、成虫になりやがった


しっ!静かにしたまえ!


君たちが騒げば、どこをはっているのか見失ってしまう

内省

内省

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-01-21

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted