ふたりの絆(28)

由加里お姉ちゃん

ヒカルは悩んでいた。

アカリから許婚の存在を知らされたことに対してだ。

「今までの付き合いは何だったんだろう。何が2人の絆だ、馬鹿やろう。」

半分、自暴自棄になっていた。

ヒカルは、1人の女性に電話をした。

由加里お姉ちゃんである。

ヒカルより3歳年上のこの女性は、ヒカルの近所の人で、小さい頃から『お姉ちゃん』と慕っていた女性だ。

ヒカルの初恋の女性でもある。

それから数日後の日曜日、ヒカルと由加里は、喫茶店で待ち合わせた。

「ヒカル君、久しぶりだね。ヒカル君のほうから相談なんて珍しいね。」

そう言って席に着いた由加里である。

「ごめんね、忙しいところ。」

ヒカルは頭を下げた。

由加里お姉ちゃんは独身だった。

昼間はパチンコ屋の店員として働き、夜も居酒屋でバイトをしている。

自分の店を持つ夢があるのだ。

「相談て何?」

由加里が聞いてきた。

「女性のことは、女性に聞いたほうが判るかもしれない。」

ヒカルは、由加里にアカリとのことを全部話した。

もちろん、許婚の存在もである。

「今時、許婚の話なんか珍しいね。」

由加里が感心していった。

「このままだと、いつか手を出してしまう。彼女がどう思ってくれているかが判らないんだ。」

ヒカルは真剣な顔をしていた。

由加里は優しい口調で話し始めた。

「アカリちゃんも、ヒカル君のことが大好きなのよ。ただ、その感情は特別なものだと思うわ。」

「特別な感情って何?」

「恋人とかではなく、仲の良い友達、兄弟のような、そんな感情だと思うの。」

由加里は、女性の目線で説明した。

「許婚の存在はどうしたらいいの?」

「アカリちゃんにとって、どれだけ親への思い入れが強いかが問題ね。他人の家庭の中までは、踏み込んでは駄目だから。」

由加里はヒカルに諭すように話をしたのだ。

「少し距離を置いてみたらどうかな?」

由加里は、ヒカルに提案をなげかけた。

「見守ることも一つの愛情よ。」

優しく言った由加里だった。

ヒカルはしばらく宙を眺めて考えていた。

「ありがとう、由加里お姉ちゃん。なんか、肩が軽くなった気がするよ。」

いつもの顔に戻って、御礼を言ったヒカルである。

「ヒカル君、まだ若いんだから。良い人たくさんいるよ、私みたいに。」

2人して、大笑いであった。

「誰も貰い手が無かったら、僕が貰ってあげるからね。」

ヒカルが冗談半分で言った。

「本当?あてにするからね。」

大人の女性の模範解答である。

この時、ヒカルの気持ちの中に、少しだけ本気が混じっていたのを由加里は気付いただろうか。

由加里に相談してからしばらく経ったある日、ヒカルはアカリに電話を入れた。

                                      →「もう1人のサプライズ」をお楽しみに。

                                      ホタル:由加里お姉ちゃんの存在がでてきましたね。
                                          とてもヒカルの気持ちを理解しているお姉ちゃんだと思います。
                                          これから、どんな展開になっていくのか気になりますね。

                              -28-

ふたりの絆(28)

ふたりの絆(28)

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-01-21

CC BY-NC-ND
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CC BY-NC-ND