ミルクとコーヒー

「ミルクとコーヒー」

コーヒーは飲まない。
熱い鉄の味がするから。
「メルクを入れればいい」と誰かが言っていた。そんな問題じゃない。その人だって分かってたはずだ。
科学の授業で言っていた。交わるはずのない物質と物質が、偶然にも組み合わさること、それを化学反応というのだと。その結果、いい方向に向かうか、はたまた悪い結果になるかはさておき、交わるはずもなかったもの同士がどうしてか交わってしまった。それは見知らぬ男女が見つめ合い、手や皮膚に触れた瞬間に、世界の色が今までに目にしたことのない淡い色に変わるのと同じ、それは恋なのだと。
人じゃなくとも、恋をするのだ。

物質と物質が交わるように、空と雲が溶け合うように、はたまた男女が、手を結び愛を分かち合うように、コーヒーとミルクがいつかお互いを好きになるように、私もまた誰かを愛する時が来るだろうか。その時はきっと、愛するその人にマグカップを手渡すのだ。鉄のように熱く、濃いコーヒーを。
「ミルクをいれるかい?」
きっとその人はいうのだ。
「ミルクはいらないわ、だって私はこの熱くて、鉄のように苦いコーヒーがすきなのだから」と。

ミルクとコーヒー

ミルクとコーヒー

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-01-21

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