ボクのズタ袋

重いなあ
このズタ袋
一体中に何が入っているんだ

そりゃいろんなものさ
ボクの大事なもの
もってりゃまた必要になる日がくるかと
大事にためてきたんだ

大事なものって思い出の品とか
写真とかか

うん
手に入れた時の喜びやそのときの興奮が
物にくっついているんだ
それをみると当時のいい感じの気分がまた蘇ってくる

ということは物というより
おまえが大事にしてる記憶が全部
そのズタ袋にはいってるんだな

そうなんだ
いつもこの袋のそばにいないとなんか不安になる
大事な自分から離れるみたいで
そしてもう二度とあんないいときはやってこないんじゃないかとおもうと
ますますこの袋にすがりつきたくなるんだ

でもそんなことしているのほんとに大変だろう
そのズタ袋すごく重そうだし
現にいまオレが手伝ってやってるから
なんとかズルズルとでも前へ引き摺って進むことができるが
もうちょっとすると二人でも無理だよ
オレにはオレのズタ袋があるからなあ

ほらみろよ
そこ
いろんなものが道端にころがってるだろう
全部持ち歩くのが辛くなって先人がズタ袋の中身を少しずつ置いていったんだ
たまにこいつらにつまずいて転けそうになったり
おもわず踏んづけて足を怪我したりする
後からくるもののことなんか考えずにみんな歩いてるからなあ

でもたまにはいいやつがいて
ほらそこの街灯
あれは随分昔にだれかが残していったものだ
いまでも暗い日になると自動的に明かりが灯る

なんでも昔ここは荒野で大地に草がところどころ生えていただけだった
嵐になると砂塵が猛烈なスピードで吹き荒れて目もあけることができない
いま俺達が歩いている道なんかなかったわけ
当然この街灯もあるわけないしな

あとからくる人のために
その人はそんな街灯のことを考えながら歩いたのかなあ
ただ自分が必要だったから持っていた
そしていらなくなったらポイとすてちゃった
ただそれだけだとおもうけど

あのね
そんなことはどうでもいいの
自分のためとが他人のためとかいうの

どんなに賢いとおもわれる人でも
自分のやったことがその後
自分以外の人にどんなふうに役に立つか立たないかなんて
わからないものさ
リアルタイムでも死んでしまったあとでもね

役に立つ役に立たない
どちらにだってなりうるし
それは後からくる人がどう考えるかにもよるしね

うーん
なるほどね
そういうものかなあ

それはそうと
ボクのズタ袋の中身
ちょっと減らそうとおもうんだ
ずっと引き摺ってきたから袋の生地が薄くなってるところがあるし
もし破れて中身がいっぺんに外にでるところを
人にみられたらはずかしいから

キミはどれを捨ててどれをキープするのがいいとおもう

おまえなあ
それくらい自分できめろよ
何が大事で何がいらないものかなんて
他人にはわからない
そうよ
このオレにもな

そういうとおもったけれど
ちょっときいてみた
キミの意見を

ボクにとっては
キミのいうことが
さっき話してた
街灯みたいなものなんだ

だからボクは
なにも捨てないで
このままキミに助けてもらいながら
前にすすんでゆくよ

ボクのズタ袋

ボクのズタ袋

人の一生って重い袋を引き摺ってあるいてゆくようなもの。いやなことはスカッとわすれ、良かったことを袋に大事にしまって前にすすみたい。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-01-18

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