5月の夜

夕闇。
あっちの浅緋から、こっちの濃紺色へ。ぬるい風が抜ける。
生ぬるい風。水飴のように私の髪に絡まって、ぬらりと通る。髪を整える。

春の気配は日ごとに消えていく。
蝕むような熱が、桜の木に油のようにまとわりつく。爛漫の季節の残骸がまたひとつ散る。

私はその撲滅を見る。立ち尽くして感じる。
生ぬるい風に抹殺され、討ち滅ぼされていく。
早くなる脈拍。

ビロードのような群青が、浅緋を遮っていく。
深い闇が春と私を包み、その中に溶ける想像をする。
意味は無い。

そう、意味は無いのだ。
あの抹殺にも、早くなった脈拍にも、ビロードの群青にも。
スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャスなぬるい風が、閉じたまぶたを撫ぜる。

意味は無い。ナンセンスなこの歌にも。この切なさにも。
黎明をただ待つ。
春の残骸の最後のひとひらが、仄暗い水飴の中で、音もなく舞った。

5月の夜

5月の夜

単語投げてもらって極力拾って遊びました 季節外れだけど、想像しちゃったものは仕方ない 意味は無い 400字強

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-01-17

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